素の魂に触れるとき

本当の悲しみから逃避してきた日本人


| 日本中心 | イギリス中心 | 南半球中心 | 中華思想 | 中心を目指す | 動物の中心 |
| 野生動物の増減 | 人間活動の拡大 | 動物愛護者 | 愛玩動物 | ヒトと動物の共生 | 後ろめたさ |
| 宇宙の中心 | 38億年の生命 | 大絶滅 | スーパーフレア | 核の冬 | 核軍縮 | 世界の多様性 |
| 自己中心 | 生命の特徴 | 家族 | 繁殖 | がん生存者 | 寿命 | 労働する動物 | サル化 |
| 杉と楠 | 悠々の大木 | 1本の木 | 万物の大木 | 無用の用 | 日本古来の悲しみ | 精神自由 |
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世界の中心に位置する
日本

日本が中央に配置されている世界地図


日本人にとって見慣れた日本が中央に配置された世界地図。インターネット

がまだなく、国外に出かける機会も少なかった時代において、この地図を

標準のように受け入れていた日本人は少なくなかったようです。


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世界の中心に位置する
イギリス

欧米で使われる世界地図


1884年、アメリカのワシントンD.C.で開催された国際子午線会議(こくさいしご

せんかいぎ、International Meridian Conference)。日本を含む27ヶ国(英領

インド・カナダを含む)が参加し、イギリスのグリニッジ天文台を通る子午線を

経度0度(⇒本初子午線、ほんしょしごせん)と定め、地図・世界時刻の基準

になりました。



当時のイギリスは、世界経済の覇者としての地位を誇った時代でした。



○共に居ること、創ること イギリス


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世界の中心に位置する
南半球



多くの世界地図は北半球が上になっていますが、この地図は南半球を上にした地図。

オーストラリアでは自国を中心に配置し、南北を逆にした地図が販売されています。


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世界の中心に位置する
中華思想



中国に古くから伝わる「中華思想」。漢民族を誇り、漢民族が世界の中心で

あり、その文化・思想がもっとも価値あるものであると捉えた思想だといわ

れます。(2019年現在、中国の民族構成は漢民族が総人口の約91.5%を占

め、残りは55の少数民族)



漢民族が居住した黄河流域は中華(中原、天子)と呼び、異民族は夷狄

(いてき⇒周辺の諸民族を卑しんで呼んだ名称)や蛮夷(ばんい)と呼ば

れました。



異民族は方角によって、東夷(とうい⇒朝鮮・日本など)、西戎(せいじゅう

⇒チベット・トルコ族など)、南蛮(なんばん⇒ベトナム・カンボジアなど)、

北狄(ほくてき)に分けられ、この四夷(しい)を、中華がその徳化によって

包摂すると考えたそうです。



○SO HAPPY 大連|北方の良港と呼ばれる港街

○中国最大の経済圏 上海


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世界の中心を目指した
日本

明治時代の世界地図(1875)|永田氏改正暗射地球訳図


※明治の教科書にみられる「人種」・「民族」記述 2019.05
 講師 竹沢泰子 先生 京都大学人文科学研究所教授
 人種主義・反人種主義の越境と転換
 京都大学人文科学研究所 国際シンポジウム
 フランス国立社会科学高等研究院 × 京都大学・人文科学研究所
 京都アカデミアフォーラム in 丸の内


現在でも言われる「白色人種」「黒色人種」「黄色人種」という分類は、フランス

の動物学者 ジョルジュ・キュヴィエ(1769-1832)が発案した分類に遡ることが

でき、「白」には善・勝利・真実、「黒」には悪・敗北・虚構、「黄色」には臆病・

反逆者といったユダヤ-キリスト教圏の伝統的価値観が深く反映されている

といいます。



日本で最初に「人種」について体系的に紹介した書物は、江戸後期、渡辺崋

山(わたなべかざん)が記した、海外情勢に疎い幕府の政策を批判した政治

書「慎機論(しんきろん、1838年)」だと考えられ、明治期に入ると福澤諭吉

の「世界國盡(せかいくにづくし、1869(明治2)年)や内田正雄による「輿地誌

略(こちしりゃく、1870(明治3)年)」が挙げられます。



「世界國盡(せかいくにづくし」は、世界各国の地理・歴史・人種をわかりやすく

説明した本で、児童にも理解できるよう配慮され、教科書代わりに用いられ

ました。その後、文部省は教科書として「萬国地誌略(ばんこくちしりゃく、

全3冊、明治7年)」を用意しています。



これらの教科書には、「白種は第一等、黄種は第二等、黒種は第三等」と

いった記載や、黄色人種中、「我が日本人及び支那人(⇒現中国人)は此

(こ)の人種中の最も進歩せるものなり」(小学萬国地誌(明治27年)・中学萬

国地誌(明治29年))といった記載が見られます。



また、小学校において教育する際の規則を定めた「小学校教則大綱(明治

24年)」第六条では、「…日本の地理及び外国地理の大要(⇒大事な点)を

(児童に)授(さず)けて、人民の生活に関する重要なる事項を理会(⇒理解)

せしめ、兼ねて愛国の精神を養うを以(もっ)て要旨とす」と書かれています。



このように、幕末・明治初期から大正時代にかて、「人種」そしてその後に登

場する「民族」や「種」という概念は、常に欧米とアジアを意識した地政学の

なかでこそ意味をもち、これらの概念は諸外国と日本人との力関係を測り、

白人と同等の文明であると刷り込むために用いられたと指摘されます。



他方、皇室や日本人の血統の言説を持ち出して国民や民族意識を高揚

させつつ、アジアの他地域や周辺少数民族に対する植民地支配を強化

していくための中心的ツールの一つであったとされます。



○よこすか はじめて物語|近代化の礎を築いた横須賀製鉄所

○権力を表象してきた建造物|日本人の自我主張


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動物の中心に位置する
人間

人間に近い遺伝子をもつというチンパンジー (ヒト科チンパンジー属)


ヒトは「動物」の一種であって、そこには、「ヒト」は他の「動物」に優越している

という思い込みがあるといいます。ヒトは確かに奇妙な動物なのだそう。他の

すべての霊長類には被毛があるのに、ヒトに残されているのは頭部のほか、

匂いを蓄えて発散させるための腋下部(えきかぶ:わきのした)と陰部、および

男性のヒゲだけといいます。



他のすべての霊長類は、日常、四足歩行をしますが、ヒトだけは直立二足歩行

をし、やたら声を出してコミュニケーションし、近代では家やビルと呼ばれる巨大

な巣を作り、コンピュータなどの複雑な道具を作って宇宙にまで足を運びます。



ついには、ボタン1つで都市はおろか一国までを破壊する兵器を作り、地球規模

の破壊活動をするのもヒトの特徴だそうです。



しかし文明が発生し、産業革命が起こり、教育が充実した近代以降のヒトと

他の動物を比較するのはアンフェアであり、生物学的視点を失うことになるそう。



ヒトを考えるに当たっては、文明発生前のヒトを思い浮かべるべきで、

その視点にたったとき、「ヒトはただの風変りなサルの一種」のようです。



※比較行動学('11) ─ヒト観の再構築─
 主任講師 藤田和生 先生 放送大学客員教授・京都大学大学院教授
 15 討論─ヒトとは何か p233-234


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野生動物の増減に
大きな影響を及ぼす人間

エゾジカ


世界中で野生動物が減り、その多くは絶滅の危機に瀕していると言われています。

日本でもカワウソやオオカミは絶滅してしまいました。トキのように絶滅寸前まで数

が減り、人が懸命に増やそうとしている動物もいます。一方で、シカやサルやイノシ

シのように、最近、畑や住宅地に出るようになって困っているという話も耳にします。

日本の野生動物は、減っているのでしょうか?それとも増えているのでしょうか?



1949(昭和24)年と現在を比較した場合、シカは増加傾向にあり、サルも増加、キツ

ネは資料がない(研究者がいない)ため、不明となっています。一方、コウノトリは

1970年代に野生では絶滅しましたが、人工繁殖を経て100羽ほどに増加。ハヤブ

サは絶滅の危険が高いといわれます。



ニホンオオカミは、19世紀までは東北地方から九州まで各地に分布していましたが、

1905年に奈良県で捕獲された若いオスを最後に、現在まで確実な生息情報がなく、

絶滅したと考えられています。ニホンカワウソは1979年に高知県で目撃されたのが

最後で、絶滅した可能性が高いとされます。



このように増えた動物もいれば、減った動物もいますが、その大きな原因は私たち

人間にあり、私たちと自然の関わり方の変化が、野生動物に対しても大きな影響を

与えているといいます。



日本の人口は江戸時代に入り急激に増加します。生活のために田畑を開墾し、

建材や燃料、肥料は山から調達しました。野生動物による農業被害は食糧生産

上の重要な課題となっていたので、駆除としての狩猟が行われました。特にシカ

については、肉の食用にとどまらず、皮、角、骨がさまざまな生活用具の材料と

して活用されました。



カワウソは川の中流域から下流に生息していましたが、人間活動の拡大ととも

に生活圏が奪われてゆきます。また、赤ちゃんを運んでくるという逸話がある

コウノトリですが、かつては作物へ被害をもたらす害鳥とみなされていました。



林業は明治時代に本格化し、都市化や薪・炭利用の需要増加によって森林は

伐採され、さらに第二次大戦下には戦中の必要物資を確保するため、また戦後

は戦災からの復興の資材を得るために、大規模な森林伐採が行われました。

これにより、荒廃した国土を緑化するために荒廃地を中心にスギ・ヒノキ・カラマ

ツ等の針葉樹の植林が進められました。



食糧不足であった戦中・戦後は、多くの野生動物が捕獲され、食用になったと

いわれます。



高度成長期以降、木材は海外からの輸入が増加し、日本の林業は急速に

縮小しました。また、農作物も海外からの輸入が増え、日本の農地は年々

減少傾向にあるといいます。



※日本の野生動物は減っている?増えている? 2019.04
 講師 杉浦秀樹 先生 京都大学野生動物研究センター准教授
 会場 京都大学東京オフィス
 第105回京都大学丸の内セミナー

※人口から読む日本の歴史 鬼頭宏 講談社学術文庫 2000

※林における鳥獣被害対策のためのガイド
 −森林管理技術者のためのシカ対策の手引き(平成24年3月版)
 林野庁 森林保護対策室

※農地面積等の推移|耕地及び作付面積統計 農林水産省 平成27(2015)年



○人間の大地・人間の季節|冬の北海道


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人間活動の拡大による
森や野生動物への影響

京都市北区中川を中心とした地域では、
古くから「北山杉・北山丸太」と呼ばれる木材生産が行われてきました。


※「古都」 川端康成 新潮文庫 1968 秋の色 p166
 (京都市北部にある杉の産地、北山杉での場面)


「人間のつくった杉どすもの。」と、苗子は言った。

「ええ?」

「これで、四十年ぐらいどっしゃろ。もう、切られて、柱なんかにされてしまう

のどす。そのままにしといたら、千年も、太って、のびるのやおへんやろか。

たまに、そない思うこともおす。うちは、原生林の方が好きどす。この村は、

まあ、切り花をつくってるようなもんどっしゃろ…。」

「………?」

「この世に、人間というものがなかったら、京都の町なんかもあらへんし、

自然の林か、雑草の原どしたやろ。このへんかて、鹿(しか)やいのしし

なんかの、領分(⇒なわばり)やったんとちがいますか。人間て、なんで

この世に出来ましたんやろ。おそろしおすな、人間て…。」



○雪国の春|環境と生物の相互作用がもたらす風景

○はてなき光景をもった絶類の美 武蔵野


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悲劇的な象徴
動物虐待的な愛護者たち

ヒバリ (雲雀、Skylark)


※「禽獣」 川端康成 1933
 教科書で読む名作 伊豆の踊子・禽獣ほか 川端康成 ちくま文庫 2017 p69-70


雛(ひな)の間は雄雌(オスメス)の分らぬ小鳥がある。小鳥屋はとにかく山から

一つの巣をそっくり持って帰るが、雌と分かり次第に捨ててしまう。鳴かぬ雌

は売れぬのだ。動物を愛するということも、やがてはそのすぐれたものを求

めるようになるのは当然であって、一方にこういう冷酷が根を張るのを避けが

たい。彼はどんな愛玩動物でも見れば欲しくなる性質だが、そういう浮気心は

結局薄情に等しいことを経験で知り、また自分の生活の気持ちの堕落が結果

に来ると考えて、今ではもう、どんな名犬でも名鳥でも、他人の手で大人とな

ったものは、たとい貰(もら)ってくれと頼まれたにしろ、飼おうとは思わぬので

ある。



 だから人間はいやなんだと、孤独な彼は勝手な考えをする。夫婦となり、

親子兄弟となれば、つまらん相手でも、そうたやすく絆(きずな)は断ち難く、

あきらめて共に暮らさねばならない。おまけに人それぞれ我(が)というやつ

を持っている。



 それよりも動物の生命や生態をおもちゃにして、一つの理想の鋳型を目

標と定め、人工的に、畸形(きけい)的に育てているほうが、悲しい純潔で

あり、神のような爽やかさがあると思うのだ。良種へ良種へと狂奔する、

動物虐待的な愛護者たちを、彼はこの天地の、また人間の悲劇的な象徴

として、冷笑を浴びせながら許している。



○善と悪を兼ね備える人間|善の基礎となる個人性の実現

○大井埋立地にみる森里海のつながり|広い視野で捉え、できるところから


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愛玩動物を好む日本人
そこに潜む人間のエゴ

動物愛護センター


人類は、地球生態系の一員として他の生物と共存しており、また、生物を食糧、

医療、科学等に幅広く利用しています。近年では野生生物の種の絶滅は年間

3万〜4万種にもおよび、過去にない速度で進行しているといわれます。



日本人は生き物をペットとして飼いたい想いが強いといわれます。

犬や猫に限らず、クワガタといった昆虫類、ヘビやカエル、イグアナといった

爬虫類、アロワナといった魚類など幅広く飼われています。



東京都と神奈川県の境を流れる多摩川では、年間200種以上の外来種が

確認され、ニシキヘビも見つかっています。その結果、日本固有種が絶滅

の危機に晒されているそうです。



今日、日本で飼われているクワガタ類の多くは外国産のものが少なくなく、

東南アジアといった産地では、外貨獲得のためクワガタの乱獲が進み、

クワガタを採るために木々を削ってまで採取が行われているといいます。

農林業より収益性が高いクワガタ採取は、農林業を放棄させ、森の衰退

につながっています。



そのような状況の背景には、人間のエゴが潜んでいるようです。



※森が育む日本の生物多様性と私たちの生活 2017.10
 講師 五箇公一 先生 国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター室長
 会場 ヤクルトホール
 国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所
 平成29年度公開講演会「木を使って守る生物多様性」


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ヒトに不都合が生じない限りにおいて成り立つ
ヒトと動物の共生

トキ|国立科学博物館


「野生絶滅(飼育下では生息)」に分類されているトキは、かつて日本中の里山

に生息していたといわれます。ヒトが里山を開いていくのに伴い、ヒトとトキの

住環境は重なるようになり、トキは害鳥とみなされるようになってゆきます。



明治時代になるとトキは羽毛をとるために乱獲され、昭和以降は、森林の伐

採による繁殖地の減少、農薬の多用による餌動物の減少、山間部の水田の

消失などが要因となり、昭和25(1950)年には野生のトキは35羽に減少。

1981年に野生のトキは5羽となり、2003年に最後のトキが亡くなりました。




北海道に飛来する渡り鳥タンチョウは、かつて多く見られたそうですが、明治期

の乱獲・開発によって激減したといわれます。1952(昭和27)年に国の特別天然

記念物に指定。給餌を行ってきた結果、現在では1000羽以上となり、農作物被

害の拡大が心配されるようになっています。




古くから神の使い「神鹿(しんろく)」として保護されてきたという奈良のシカ。

戦後の食糧難の際には捕獲され激減してしまったそうです。1957(昭和32)

年には文化財保護法に基づき天然記念物に指定され、それ以来、手厚く

保護されてきました。

しかし、近年になって奈良のシカによる農作物被害が深刻化していること

から、2017年、奈良県は文化庁から許可を得て、捕獲・処分を行いました。



○降り積もる雪の果て|トンネルの先にある雪国

○食・農・里の新時代を迎えて


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相手を慰めるというよりは
自らの後ろめたさを慰める

動物慰霊碑
「Animals in War Memorial」 Hyde Park, London


※「京都ぎらい」 井上章一 朝日新書 2015
  五 平安京の副都心 天龍寺と法隆寺 p193-194


たたかいの勝者が、勝利に安住しきれないことは、今でもよくある。

敗者が自分にいだくであろううらみを、心やすらかにうけとめられる人

は、あまりいない。勝った側も、どこかで、申し訳なく、またうしろめ

たく感じるものである。とりわけ、だましうちや、うらぎりで勝利をおさ

めた勝者は、その不安をふくらませやすい。



現代人ならば、そういうさいにおこる胸さわぎを、心理的な反応として

うけとめよう。勝利をやましく感じてしまう自分に、もっと強くなれと、

言い聞かせるのかもしれない。あるいは、カウンセラーにすがったり

するのだろうか。



だが、以前は脳裏にうかぶそういった心配事を、怨霊のせいにした。

自分の心にわだかまりがあるせいで、不吉なことを想いえがいて

しまうとは、考えない。うらみをすてられない敗者の霊こそが、勝者

をさいなむのだと思い込む時代もあった。当人じしんの心理ではなく、

他人の霊が、自分を不安にさせているのだ、と。(中略)



怨霊の力がきわだつとみなされたおりには、その神格化がはかられた

りもした。政治闘争の敗者は、しばしば勝者たちの手で、神へとまつり

あげられていったのである。



もう、俺たちにはいろいろなわざわいを、およぼしてくれるな。これからは、

お前のことを神としてうやまいつづけるから、おとなしくしていてほしい。

そんな想いをこめて、勝者およびその末裔は、敗者を神にしたてていった。

現実世界を牛耳るものが、仮象世界での栄光だけは、仇敵(きゅうてき)に

ゆずったのである。


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宇宙の中心に位置する地球
天動説

プトレマイオスの天動説


地球が宇宙の中心に位置して静止し、他のすべての天体が地球の周りを回って

いると考えた「天動説」。2世紀頃、ギリシアの天文学者プトレマイオスによって

体系化されたといわれます。



天動説は、15世紀にポーランドの天文学者コペルニクスが「地動説」を唱えるまで、

永きにわたり支持されてきたそうです。



○UNIVERSE|自然科学と精神科学の両側面


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38億年にわたる生命の歴史
20万年前に誕生した人類

アポロ17号から撮影された地球


46億年前に誕生したと考えられられている地球。誕生したばかりの地球は高温

のマグマに覆われ、生命はとても存在できる環境ではなかったようです。その

後、2億年かけて地球表面は冷却され、44億年前に海が誕生したといわれます。



生命は約38億年前に海で誕生したと考えられています。当時の地球は酸素が

ほとんどなく、光合成を行わない微生物が最初だと考えられています。



25〜27億年前には、シアノバクテリア(藍藻:らんそう)と呼ばれる光合成を行う

微生物が誕生。地球の酸素濃度が増加することでオゾン層が形成され、海の

生物は陸上に上がることができるようになったといわれます。




それから長い月日を経て、私たち人間の祖先である哺乳類が誕生したのは

およそ6,600万年前。人類(ホモ・サピエンス)が誕生したのはほんの20万年前

だといわれます。



※地球46億年の歴史と生命進化のストーリー
  田端萌子&JAMSTEC
  JAMSTEC×Splatoon 2『Jamsteeec(ジャムステ〜ック)』

※宇宙からみた生命史 2019.06
 講師 小林憲正 先生 横浜国立大学教授
 放送大学神奈川学習センター



○生命の跳躍|海洋を統合的に理解する

○人類の未来を切り開く|地球深部探査船「ちきゅう」


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生命の大絶滅
5回の大量絶命を経験してきた地球

6500万年前(白亜紀末)、巨大隕石の衝突によって
恐竜は絶滅したと考えられているそうです


生命の歴史である38億年間の道のりは大変過酷(かこく)なものでした。



例えば、地球が丸ごと凍ってしまう「スノーボールアース」は3度も起こった

ことが分かっています。この時、赤道付近だけでなく海の中も深さ2000メー

トルまで氷に覆われ、多くの生物種が絶滅したと考えられます。



ほかにも、「海洋無酸素事変(かいようむさんそじへん)」とよばれる出来事が、

古生代や中生代に繰り返し起こりました。その中でも最も大規模だったといわ

れるのが、2億5100万年前のものです。地球全体が酸欠状態になり、海では

数千万年間にもわたって無酸素状態が続き地球上の68パーセント、海の生物

は96パーセントの種が絶滅したとされています。6600万年前のジュラ紀の終

わりに起きた、隕石衝突による恐竜絶滅は有名ですが、海洋無酸素事変は、

それよりもずっと大規模に生物が死滅した事件でした。



※地球46億年の歴史と生命進化のストーリー
  田端萌子&JAMSTEC
  JAMSTEC×Splatoon 2『Jamsteeec(ジャムステ〜ック)』

※宇宙からみた生命史 2019.06
 講師 小林憲正 先生 横浜国立大学教授
 放送大学神奈川学習センター


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6回目の大絶滅?
甚大な被害が懸念されるスーパーフレア

太陽フレア NASA


太陽の表面で起きる爆発現象は「太陽フレア」と呼ばれ、太陽の活動が活発になる

極大期には頻繁に発生するといわれます。フレアが起こると電波やX線といった素

粒子が飛び出し、10分から数日で地球に到達し、電子通信の妨害などの影響が

生じます。



1989年3月13日の巨大なフレアでは、気象衛星の故障や通信障害、カナダのケベ

ック州では大規模停電を発生するなど、被害総額は100億円以上にのぼったとさ

れます。



近年の研究では、巨大フレアの100倍〜1000倍にもなるスーパーフレアが発生する

可能性が指摘されています。もし発生した場合、オゾン層は破戒され、地球規模で

の大停電・通信障害、全ての航空機の飛行停止といった大規模な災害になること

が予想されています。



○UNIVERSE|自然科学と精神科学の両側面


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人為的な大絶滅の可能性
核の冬

広島に投下された原爆 1945年8月6日


1983年、カール・セーガン博士らによって提唱された「核の冬(Nuclear winter)」は、

核戦争が起った場合、核爆発による破壊や火災により微粒物質が大気中に巻き

上げられて日光を遮り、地球が寒冷化するという仮説。



核攻撃で直接被害を受けなかった地域も壊滅的な影響を受け、世界的に25億人

の餓死者がでると推測しています。



○Dear Kitty|ずっと誰よりも大切なキティへ

○持続可能な循環型社会の基盤にあるもの|強さばかりでなく、弱さに目を向ける


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国の安全保障と密接に関係する
核軍縮

長崎に投下された原爆 1945年8月9日


日本は核兵器の禁止に積極的だと思いがちですが、核軍縮は国の安全保障

と密接に関係し、核兵器保有国と同盟関係にある国は保有国に寄らざる得な

い状況にあるといいます。



核兵器の禁止を目指す条約交渉における日本の対応は以下のとおり。

○2015年 国連総会メキシコ提案
 賛成:138 反対:12 棄権:34、日本は棄権

○2016年 オープンエンド作業部会
 賛成:68 反対:22 棄権:13、日本は棄権、核兵器保有国は不参加

○2016年 国連総会オーストリア・メキシコ提案
 賛成:113 反対:35 棄権:13、日本は反対

○2017年 核兵器禁止条約(TPNW)交渉
 日本は初日参加したのち不参加



※核軍縮と日本 2017.12
 講師 浅田正彦 先生 (京都大学法学部法学研究科 教授)
 会場 京都アカデミアフォーラム in 丸の内
 国際社会の中の日本─世界との関係・日本の現状─
 京都大学「東京で学ぶ 京大の知」シリーズ26



○平和と独立を守る防衛省


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ヒトによって中心は異なる
世界の多様性



※エウロペアナ 20世紀史概説 パトリク・オウジェドニーク(チェコ、1957-)
 阿部賢一・篠原琢(訳) 白水社 2014年 p15-16


20世紀の終わり、人びとは新千年紀の始まりを2000年に祝うべきか、

あるいは2001年に祝うべきかよくわからずにいた。世界の終焉を待って

いた人びとにとって、それは重要な問題だった。

けれども、大多数の人は世界の終焉など信じておらず、そんなことは

どうでもよいと思っていた。

また、ある人たちは世界の終焉を待ちかまえていたが、それは何の変哲

もない普通の一日に起こるにちがいないと信じていた。

キリスト教徒のなかには、後世に伝えられた年よりも4年早くキリストは

誕生しているのだから、実際には2004年なのだと主張するものもいた。

またユダヤ歴ではすでに5760年になっているが、イスラム歴では1419年

であり、ユリウス暦はグレゴリオ暦よりも短いので1917年の10月革命が

勃発したのは11月だと言うものもいた。

仏教徒にしてみれば、それはどうでもよいことだった。仏暦では2452年に

なっており、それよりも、来世で何に生まれ変わるのか、カエルになるのか、

それともオナガザルになるのか、という点に大きな関心を寄せていた。



※ヨーロッパの文学 2017.12
 講師 阿部賢一 先生 (文学部准教授、中東欧文学)
 東京大学大学院人文社会系研究科・文学部
 集英社 高度教養寄付講座 第12回
 会場 東京大学本郷キャンパス 国際学術総合研究棟1階3番大教室



○多様な視点から始まる自己への洞察


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宇宙の中心に位置する
自己

バスを待つ人々


バス停でバスを待つ人々が視線を投げかけています。その視線は、道路を

往来する各々の車に注目している訳でははなく、また、道路を横断する歩

行者に注目している訳ではないようです。



バスを待つ人々の最も身近な関心は、自分が乗ろうとしているバスに向け

られています。






2018年11月から全国の鉄道事業者・通信事業者によって実施されている

「やめましょう、歩きスマホ。」キャンペーン。駅構内には以下のように

書かれたポスターが掲示されています。



「ぶつかった、とあなたは思う。ぶつかってきた、と周りは思う。」



○人間的なるものの別名|愛するあまり滅ぼし殺すような悪


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生命の基本的な特徴
新陳代謝・自己複製・進化

自己の複製である「子ども」


生命の基本的な特徴として、「新陳代謝(しんちんたいしゃ)を行う」、「自己複製を

行う」、「進化する」といった項目が挙げられます。



「新陳代謝」は、古いものと新しいものが入れ替わることを意味し、タンパク質と

いったエネルギーを外部から取り込み、体内で化学的に変化させ、不用なもの

を外部に放出することを指すそうです。



「自己複製」は、自分自身と同一の"複製"を作り出すことで、DNAに記された

遺伝情報を伝達することによって行われます。



「進化」は、個体に生じるものではなく、生物種の遺伝的な特徴が世代を経る

過程において変化してゆくことを指します。


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とても珍しい
家族を単位として暮らすサル



※南米小型サルが切り開く新たな研究 2019.07
 中村克樹 先生 霊長類研究所教授
 第108回 京都大学丸の内セミナー


 サルとヒトを比べることで、私たちが「普通」だと考えていることが実は非常

に珍しいことだと気付かされることがあります。みなさんは、父親がいて母親

がいて子どもを産んで育てる家族の暮らしが普通だと思っていませんか。

実は家族を単位として暮らすサルの仲間は非常に珍しいのです。例えば、

チンパンジーやニホンザルは、適当な数のオスとメスが群れを作ってくらし

ています 。オスとメスが交尾して子が生まれますが、どのオスが父親か分

かりません。



 ヒトのように家族を単位として暮らすサルの仲間は、テナガザルやマーモ

セットの仲間くらいなのです。私が普段研究対象にしているマーモセットという

南米原産の小型ザルには、その他にもヒトとよく似た特徴があります。目と目

を合わすアイコンタクトをとり、父親も子育てを手伝い、皆で同じ行動を取りた

がるなどです。また、食物を子と分け合うというサルでは非常に珍しい行動も

とります。こうした特徴やサルの中では非常に多産であるという特徴などから、

近年研究対象として非常に注目されてきています。


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繁殖活動を終えた後も
長く生きる

シャチの繁殖活動は40歳ぐらいまで。
その後およそ50年(90歳まで)生きることができるそうです。


繁殖活動は生物の基本的な目的だといわれます。鮭は繁殖活動を終えると力尽き

死んでしまうことが知られていますが、このような生物は魚類のほか、昆虫に多く

みられ、また、一部の哺乳類(ex,アンテキヌス)でもみられるそうです。



一方、人間は繁殖活動を終えた後も長く生きることができます。哺乳類の仲間

であるシャチやゴンドウクジラのメスには閉経があることが分っているそうで、

例えばシャチのメスは12歳から40歳ぐらいまで繁殖活動を行い、その後およそ

50年生きることが知られています。



※南米小型サルが切り開く新たな研究 2019.07
 中村克樹 先生 霊長類研究所教授
 第108回 京都大学丸の内セミナー



○私たちの生涯|生と死の狭間にある「時」を歩む


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がん生存者の
QOL向上を目指して

ノルディック・ウォーキング


日本人の死亡原因の1位となっている「癌(がん)」。男性が生涯に「がん」を

罹患(りかん)する確率は62%(2人に1人以上の割合)で、部位別には、胃:

11%、肺:10%、大腸:9%、前立腺:9% … の順になっています。



一方、女性が生涯に「がん」に罹患する確率は47%。部位別には、乳房:9%、

大腸:8%、胃:5% … の順になっています。(国立がん研究センター、2014)



「がん」による死亡者数は年々増加傾向にあり、2017年にがんで死亡した

人は、男性:220,398人、女性:152,936人、合計:373,334人となっています。



「がん」治療の技術は日進月歩で向上しているにも関わらず、死亡者数が

増加している背景には、日本人の寿命が伸びていることにあるといわれます。




次に、「がん」を罹患した人々の5年生存率をみてみると、前立腺:98%、

乳房:92.7%、大腸:72.9%、胃:71.1% …。全体では65,8%となっており、

「がん」を罹患した後も生存する確率は高まっています。

(国立がん研究センター、2018)



「がんサバイバー⇒がん生存者」は、約700万人いるといわれ、今後、毎年

60万人以上増加していくと予想されています。このような背景から、がんサ

バイバーの人々ができるだけ質の高い生活(QOL…Quality of Life)をおくれ

るように配慮した取り組みに注目が集まっています。



厚生労働省は、がんサバイバーが仕事を続けられることを目標にしています。



※がん予防とがん生存者の運動 2019.06
 西端泉 先生 川崎市立看護短期大学 教授
 放送大学神奈川学習センター



○競技スポーツと生涯スポーツの融合|スポーツクラブ・マネジメント


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他の生き物から命をもらった人間
グリム童話「寿命」

グリム童話 (第2版 第1巻, 1819)
タイトルページとルートヴィヒ・グリム(弟)による口絵「兄と妹」


※「寿命」 グリム童話 あらすじ


世界を創った神さまは、全ての生き物に30年の寿命を与えようと考えていました。

そこにロバがやってきて神さまから30年の寿命を告げられると、こう答えました。

「それは長い時間です。わたしのつらい暮らしを考えてください。朝から夜まで重

い荷物を運ぶんです。他人がパンを食べるために、麦の入った袋を水車場に引

きずっていくんです。ただぶたれたり、蹴られたりして、次々と働かされるんです。

長い時間の一部分を免じて下さい。」

神さまは憐れに思い、ロバの寿命を18年減らしてやりました。



ロバがほっとして帰ると、犬がやってきました。神さまに30年の寿命を告げられる

と、犬はこう答えました。「わたしがどれだけ走らなければならないか、お考えくだ

さい。わたしの足はそんなに長くもちません。声を失い吠えられなかったり、歯が

無くなって噛みつくことができなくなれば、わたしはすみっこで唸るだけです。」

神さまはもっともだと思い、犬の寿命を12年減らしてあげました。



すると猿が来ました。神さまに30年の寿命を告げられると、猿は陽気で振るまっ

ている陰で悲しい思いをしていことを訴え、神さまはサルの寿命を10年減らして

あげました。



最後に人間が現れました。神さまに30年の寿命を告げられると、人間はこう答え

ました。「なんて短いんでしょう。自分の家を建てて、自分のかまどに火が燃える

ようになり、木を植え、花が咲き、実を結び、自分の暮らしを楽しもうと思うときに

死ななくてはなりません。ああ、神様、私の寿命を延ばしてください。」

「それではロバの18年をそれに足そう。」と神さまは言いました。

「それでは足りません」と人間は答えました。

「犬の12年もお前にやろう。」

「まだ少なすぎます。」

「猿の10年もやろう。だがそれ以上はだめだぞ。」



人間は去っていきましたが満足していませんでした。こうして人間は70年生きるの

です。最初の30年(⇒0歳〜30歳)は人間の年月で、たちまち過ぎ去ります。この間、

人間は健康で明るく、喜んで仕事をし、生活を楽しみます。

次にロバの18年(⇒31歳〜48歳)が続き、この間は次から次へと重荷を背負い、他

の人に食べさせる麦を運ばなくてはなりません。まめに働く報いが、ぶたれたり蹴

られたりすることです。

それから犬の12年(⇒49歳〜60歳)がくると、すみっこに横になって、うなるばかりで、

もう噛む歯はありません。

これが終わると、猿の10年(⇒61歳〜70歳)でおしまいになります。そのとき人間は

頭が弱って愚かになり、ばかげたことをして、子供たちの笑い者になります。



※「完訳 グリム童話集5」 橋健二(訳) 小学館ファンタジー文庫 2009
  176.寿命 p19-23を参考


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自ら進んで退化する
労働する動物の勝利

320万年前の猿人ルーシーの復元模型|国立科学博物館


※「人間の条件」 ハンナ・アレント 志水速雄(訳) ちくま学芸文庫 1994
 第6章 <活動的生活>と近代 45 <労働する動物>の勝利 p500



労働社会の最終段階である賃仕事人の社会は、そのメンバーに純粋に

自動的な機能の働きを要求する。それはあたかも、個体の生命が本当

に種の総合的な生命過程の中に浸されたかのようであり、個体が自分

から積極的に決定しなければならないのは、ただその個別性─まだ

個体として感じる生きることの苦痛や困難─をいわば放棄するという

ことだけであり、行動の幻惑され「沈静化された」機能的タイプに黙従

するだけであるかのようである。



…たしかに近代は人間の活動力の先例のない、将来を約束するような

爆発をもって始まった。しかしその近代は、歴史上最も不活発で、最も

不毛な受身の状態のままで終わるかもしれない。



…もう一つ、もっと重大で危険な兆候がある。それは、人間がダーウィン

以来、自分たちの祖先だと想像しているような動物種に自ら進んで退化

しようとし、そして実際にそうなりかかっているということである。



○善と悪を兼ね備える人間|善の基礎となる個人性の実現


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「サル化」する人間社会
個人の利益と効率を優先するサル的序列社会

地獄谷野猿公苑|長野県山ノ内町


「サル化」する人間社会 山極寿一 集英社インターナショナル 2014
 第七章 「サル化」する人間社会


サルの社会は、個体の欲求を優先します。個体にとっての利益とは、

「なるべく栄養価の高いものを食べること」と「安全であること」です。

サルは群れの中で序列を作り、全員でルールに従うことで、個体の

利益を最大化しています。自分より強いサルの前では決して食べ物

に手を出さないのは、食べ物をめぐるトラブルを未然に防ぐためです。

あらかじめ勝ち負けを決めておき、勝ったほうが食べ物を独占するのです。

(※サルは所属する集団に愛着を持たない p157-158)




家族も共同体もなくなってしまったら、人間は帰属意識を失います。人間

は、互いに協力する必要性も、共感する必要性すら見出せなくなっていく

でしょう。



個人の利益さえ獲得すればいいなら、何かを誰かと分かち合う必要もあり

ません。他人を思いやる必要もありません。遠くで誰かが苦しんでいる

事実よりも、手近な享楽を選ぶでしょう。どこかの国の紛争なんて、他人事。

自分に関係ないから共感なんてする必要もない。これはまさにサルの社会

にほかなりません。



サルの社会に近づくということは、人間が自分の利益のために集団を作る

ということです。そうなれば、個人の生活は今よりも効率的で自由になります。

しかし、他人と気持ちを通じ合わせることはできなくなってしまいます。



もしも本当に人間社会がサル社会のようになってしまったら、どうなるの

でしょうか。サル社会は序列で成り立つピラミッド型の社会です。人を負かし

自分は勝とうとする社会とも言い換えられます。そんな社会では、人間の

平等意識は崩壊するでしょう。

(※個人の利益と効率を優先するサル的序列社会 p164)



○雪国の春|環境と生物の相互作用がもたらす風景

○野生のニホンザルを展示する高崎山自然動物園


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人為的に育った杉と
自然に育った楠の対比

楠(くすのき)|青蓮院門跡(しょうれんいんもんぜき, 京都市)


※「古都」 川端康成 新潮文庫 1968 松のみどり p184-185


千重子が、どうして、楠(くすのき)を見たいと思いついたのか。植物園の

楠(くすのき)並木を歩いたためか、また、北山杉は、いわば栽培された

もので、自然の大木が好きだと言ったためか。(中略)



「なあ、千重子、楠て、お父さんも、よう知らんけど、暖かい土地、南国の

木やないやろか。熱海とか、九州とかでは、そら、さかんなもんや。ここ

のは老木やけど、大きい盆栽みたいな感じせえへんか。」

「それが、京都やおへんの? 山でも、川でも、人でも…。」と、千重子

は言った。

「ああ、そうか。」と、父はうなずいたが、「人間は、みながみな、そうとは

かぎらへんけどな。」

「………。」

「今の人かて、むかしの歴史の人かて…。」

「そうどすな。」

「千重子のように言うたら、日本という国が、そうやないか。」

「………。」

千重子は、父の話の大きくなったのは、いかにもと思ったが、「そやけど、

お父さん、あの楠の幹でも、妙にひろがった枝でも、よう見てると、こわい

ように思いまっせ、えらい力やおへんの?」

「そらそや、若い娘が、そないなこと、思てるの?」と、父は楠をふりかえり、

それから、娘をじっとながめて、「たしかに、千重子の言う通りや。千重子の、

黒光りする、髪がのびるのかて…。お父さんが、鈍(にぶ)うなってしもたん

やな。老いぼれたんやな。いや、ええこと、聞かしてもろた。」



○たおやかに熟成してきた白神の時間


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切られたりすることのない
悠々の大木

樗(おうち) ・ センダン(栴檀) ・ chinaberry tree


※「荘子(内篇」 荘子, 福永光司・興膳宏(訳) ちくま学芸文庫 2013
 道遥遊篇 p34-35



恵子(けいし:荘子の友人)が荘子(そうし)にいった。「ぼくのところに大木があって、

みなに樗(おうち)と呼ばれている。その幹はこぶだらけで墨縄(⇒すみなわ:墨に

つけて、材木にまっすぐ線をつけるのに使う糸)」もあてられず、小枝は曲がりく

ねってぶんまわし(⇒コンパス)や差しがね(⇒L字型のものさし)もあてられない。

道ばたに立っているのに、大工も知らぬ顔だ。ところで君の議論にしても、大きい

ばかりで役に立たない。みんながそっぽを向いてしまうのはそのせいだよ。



荘子「君はヤマネコやイタチを知ってるだろう。あいつらは身を伏せて隠れ、うろ

ついている獲物を待ち受けて、あっちこっちと跳ねまわり、高いも低いもへっちゃ

らだが、あげくは罠にかかったり、網にからめ取られたりして死んでしまう。一方、

ほら、あの大牛ときたら、空の果てまで垂れこめた雲みたいにでっかい。でっか

いにはでっかいが、ネズミだって捕らえられない。いま君のところの大木は、役に

たたんとこぼしているが、なぜそれを何一つない村里や、果てもなく広い曠野(こう

や)に植えて、ゆったりとそのかたわらに憩い、のびのびとその下に寝そべらない

んだい。まさかりや斧で若木のうちに切りたおされずもせず、何かに危害を加え

られる恐れもない。何の役に立たなくたって、気に病むことなんてまったくないん

だよ」。


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私は
その木がどのくらい大きくなるかを知らない

トゥーレの木 メキシコ


「Wenn ich einen Baum pflanze, weiss ich nicht, wie gross er wird.」

1本の木を育てようとする時、私はその木がどのくらい大きくなるかを知らない。



※カール オルフ(Carl Orff, 1895-1982,ドイツの作曲家・教育家)



○おお運命の女神よ カルミナ・ブラーナ


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万物の生まれ出る
大木

蒲生(かもう)のクス
蒲生八幡神社 鹿児島県姶良(あいら)市


※「老子」 福永光司(訳) ちくま学芸文庫 2013 第四章 p17


道はからっぽで、いくら注いでも一杯になるということがない。それは奥深くて

万物の生まれ出る大木のようだ。それは万物の鋭さを挫(くじ)き、万物の

もつれを解きほぐし、万物の輝きを和らげ、万物のよごれに己れを同じくする。

それは深くたたえて常存不滅の存在のようだ。わたしにはそれが誰の子供

なのか分からない。どうやらそれは天帝に先だつ実在のようだ。


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無用の用
「役に立たなければならない」という観念からの解放

 中国古代の思想家 老子


※「荘子(内篇」 荘子, 福永光司・興膳宏(訳) ちくま学芸文庫 2013
 応帝王篇 p264-265


陽子居(ようしきょ)が老たん(⇒老子)に会ってたずねた。「ここに一人の人物

がいます。頭の回転が速く意志が強固で、透徹(とうてつ)した洞察力を備え、

道を学んで倦む(うむ⇒嫌になる)ことがありません。」このような人は、明王

(みょうおう)に匹敵できるでしょうか」。



老たん「そんなのは聖人からすると、小役人か職人程度のもので、身を苦し

め心をすり減らしている者だ。それに虎や豹は美しい毛皮のために猟師を

引きよせ、猿はすばしこさのために、犬はイタチを捕らえる能力ゆえに人に

つながれる。このような者が、どうして明王に比べられよう」。


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日本古来の悲しみ
真の悲劇も不幸も感じる力がない日本人

「凍雲篩雪図(とううんしせつず、国宝)」
浦上玉堂(うらかみ ぎょくどう、1745-1820年) 川端康成記念会


※「哀愁」 川端康成 1947
  教科書で読む名作 伊豆の踊子・禽獣ほか 川端康成 ちくま文庫 2017


…芸術が分からないことに私は幸福は感じないけれども、自然や人生の分から

ないことに幸福を感じるのは事実である。(中略) そして私は作家としてのこの

不安と不足とに、生の安心と満足を覚える時がある。(中略)

 戦争中、ことに敗戦後、日本人には真の悲劇も不幸も感じる力がないという、

私の前からの思いは強くなった。感じる力がないということは、感じられる本体が

ないということであろう。

 敗戦後の私は日本古来の悲しみのなかに帰ってゆくばかりである。私は戦後

の世相なるもの、風俗なるものを信じない。現実なるものをあるいは信じない。

近代小説の根底の写実からも私は離れてしまいそうである。もとからそうであ

ったろう。(p173-174)




…「土曜夫人」(⇒大阪庶民の生活を描いた作品、織田作之助 作)の悲しみも

「源氏物語」のあわれも、その悲しみやあわれそのもののなかで、日本風な

慰めと救いとにやわらげられているのであって、その悲しみやあわれの正体

と西洋風に裸で向かい合うようにてはできていない。私は西洋風な悲痛も苦

悩も経験したことがない。西洋風な虚無も廃退も日本で見たことがない。

(p177)




…「もの悲しげな子守歌が私たちの魂にしみた。いのちの流れぬ子供歌が

私たちの心を鎧(よろ)った。

 日本は軍歌も哀調を帯びていた。古(いにしえ)の歌のしらべは哀愁の形

骸を積み重ねた。新しい詩人の声もすぐ風土の湿気に濡れ落ちてしまう。」

(p182)



○日本人の精神性を探る|美徳が強調されてきた社会

○私が私になってゆく|ハイデガー「存在と時間」


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初めて精神の自由を
獲得する

立山


※「山の音」 川端康成 新潮文庫 1957 秋の魚 四 p319


「菊子が自由だって、修一(菊子の夫)は菊子に言わなかったかね。」

「いいえ。」と菊子はいぶかしげな目を上げて、

「自由って…?」

「うん、わたし(⇒修一の父・信吾)もね、自分の女房が自由とはどういうことだと、

修一に反問したんだが…。よく考えてみると、菊子はわたしからもっと自由になれ、

わたしも菊子をもっと自由にしてやれという意味もあるかもしれないんだ。」

「わたしって、お父さまのことですの?」

「そう、菊子は自由だって、わたしから菊子に言ってやってくれと、修一が言うんだ。」

この時、天に音がした。ほんとうに信吾は天から音を聞いたと思った。

見上げると、鳩が五六羽庭の上を低くななめに飛んで行った。

菊子も聞いたらしく、廊下の端に出ると、

「私は自由でしょうか。」と鳩を見送りながら涙ぐんだ。

沓脱石(くつぬぎいし)のテル(⇒犬)も鳩の羽音を追って、庭の向こうにかけ出していた。



○精神自由の再生|ルネサンス都市フィレンツェ

○北アルプスを貫く立山黒部アルペンルート


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人類の死や悲しみを対象にした観光
ダーク・ツーリズム

原爆ドーム 広島市
かつて原爆ドーム周辺にはスラム街があったそうです


※日本の「ダーク・ツーリズム」:グローバル、国、市民の視点から 2019.06
 ・講師 アンドルー・ゴードン 先生 ハーバード大学教授
 ・鼎談(ていだん⇒三人が向かい合って話をすること)
  アンドルー・ゴードン 先生 ハーバード大学教授
  チョルヒ・パク 先生 ソウル大学教授
  吉見俊哉 先生 東京大学教授
 会場 東京大学・鉄門記念講堂
 TOKYO COLLEGE



災害被災跡地や戦争跡地など、人類の死や悲しみを対象にした観光は、ダーク・

ツーリズム(Dark tourism)と呼ばれ、例えば、ナチス・ドイツによって大量殺戮が

行われたポーランドにあるアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所や、世界で

初めて原子爆弾が投下された広島の原爆ドームなどが挙げられます。



ダーク・ツーリズムの概念は、1996年イギリス人のJohn Lennon, Malcolm Foley

の著書「Dark Tourism (Tourism, Leisure & Recreation)」によって提唱された、

ここ数十年の新しい概念だそうです。



このような潮流がある中、2015年、端島(軍艦島)を含む23ヵ所が世界文化遺産

「明治日本の産業革命遺産〜製鉄・製鋼、造船、石炭産業〜」として登録されま

したが、これらの施設には光と影の側面があり、登録までには紆余曲折があっ

たといいます。



2014年、日本の世界遺産への申請を受けて、韓国は長崎造船所や端島炭坑など

7つの施設で第二次世界大戦中に多くの朝鮮人が徴用され、多くの犠牲者を出し

たという理由から、全23施設のうち7施設の申請撤回を求めました。



また、中国も中国人が働かされた施設があるとして登録反対を表明します。

これに対し日本の岸田文雄外相は、この遺産群の対象年代は1850年代から

1910年であり、徴用が行われた年代とは異なると反論しました。



時代を区切ること自体、歴史のある部分しか見ない狭い解釈(⇒箱の中の歴史)

だと考えられますが、その後の審議では、日韓それぞれが英語で発言し、日本

側は徴用工について、本人の意思に反したという意味の「brought against their

will」という表現を使って、植民地時代に朝鮮半島から連れてこられたと言及。

また、厳しい環境で労働を強いられた「forced to work under harsh conditions」

などとも述べ、こうした歴史を記憶するために、適切に対応すると表明しました。



しかし、岸田文雄外相はその後の会見で、「我が国代表の発言における「forced

to work」との表現等は、「強制労働」を意味するものではないとの発言を行い

ました。


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目を背けがちな
暗い側面を直視する

端島 (はしま、通称、軍艦島) 長崎市


1985年、アメリカのテレビ局TBSのシアトル局は、軍艦島のドキュメンタリー

を放映したそうです。その内容は軍艦島の明るい側面だけでなく、暗い側面

が取り上げられています。ハーバード大学のアンドルー・ゴードン教授は、

現在でも学生に見せているそうで、日本は明るい側面ばかりが強調され、

暗い側面は無視されていると指摘します。



ゴードン先生は、ダーク・ツーリズムの今後の課題として、以下を掲げて

います。


○複数の視点を取り入れること

○目を背けがちな暗い側面を直視

○同じ時期の明るい、感心できる側面を視野に入れる (日本はこちらばかり)

○明暗の密接な相互関連性を重視



※日本の「ダーク・ツーリズム」:グローバル、国、市民の視点から 2019.06
 ・講師 アンドルー・ゴードン 先生 ハーバード大学教授
 ・鼎談(ていだん⇒三人が向かい合って話をすること)
  アンドルー・ゴードン 先生 ハーバード大学教授
  チョルヒ・パク 先生 ソウル大学教授
  吉見俊哉 先生 東京大学教授
 会場 東京大学・鉄門記念講堂
 TOKYO COLLEGE



○日本人の精神性を探る|美徳が強調されてきた社会

○清らかな世界、それは私たちの住む穢れた世界


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現代社会の暗部
都合の良い所ばかり強調し、不都合は隠蔽する



○日本人の美徳を強調すればするほど、けがれた側面を闇に押しやる


日本には四季があって、自然が豊かで美しい。街にはゴミがなくきれいだ。

日本人は礼儀正しく親切で、他者への思いやりがある。犯罪が少なく、

落し物は戻ってくることが多い。勤勉で時間を守り、技術力が高い。



よく言われる日本の美しい側面であり、私自身、実際にそうだと感じます。

しかし、美しい側面を強調するればするほど、けがれた側面は闇に押し

やられ、意識されなく、また意識したくなくなり、嫌悪の対象として表だって

話題にすることは避けられてきたように思えます。



○地域間偏見
 歴史があり、権威があり、山の手に住んでいる。それに比べてお前は…


京都では、平安京内であった洛中(らくちゅう)と、その外である洛外(らくがい)

とでは、現在でも地域間偏見の意識があるといいます(※1)。



私の住む横浜は「オープン・ヨコハマ」を標榜していますが、市内において

地域間偏見の意識が内心にあると感じる場面に少なからず出会いました。

それでも、横浜は開港から150年ほどと都市の歴史が浅く(関内はかつて

寒村だった)、都市の発展と共に多くの人々が流入してきたことなどから、

地域間偏見の意識は比較的薄いように感じます。



○社会を支えているにも関わらず、感謝されず、忌み嫌われる

職業に目を向けてみると、食肉処理業は、食肉を供給するうえで欠くことので

きない大切な仕事ですが、この仕事に対する差別や偏見がいまだに根強く残

っているといいます(※2)。かつて食肉処理や汚物処理は穢多(えた)・非人(ひ

にん)と呼ばれる人々が担い、「穢(けが)れ多い」・「人に非(あら)ず」という

名称からも読みとれるように、忌み嫌われる存在だったようです(※3)。



エネルギー源の一つである原子力発電。福島原発事故以前から原発労働者

は特殊な職業であり、賤(いや)しい職業とみなされてきました。原発の作業は、

被爆する危険性のある作業であり、特殊な労働者が必要でした。私たちの暮

らしは、こうした人たちに支えられてきましたが、作業員は自らの身体を危険

に晒しながらも、社会的に認知されることもなく、感謝もされず、逆に嫌われる

存在でした(※4)。



○序列意識が次世代を犠牲にする

日本は秩序と階層的な上下関係を重視してきといわれます(※5)。序列の一

つである「年功序列」と「能力」の関係をみた場合、日本は常に年功序列に

圧倒的な比重が置かれ、能力については、「働き者」とか「なまけ者」という

ように、個人の努力差には注目しますが、「誰でもやればできるんだ」という

能力平等観が非常に根強く存在していたとされます(※6)。



私たちの社会システムは、年長者ほど能力も見識も高く、地位も報酬も高い、

という前提の上に成り立っています(※7)。人口が増加傾向にあり、ピラミッド

型の人口構成ならば有効なシステムだと思えますが、今日の日本において、

「年長者ほど能力も見識も高い」という前提は、成り立たなくなっているように

思えます。



年功序列的意識は、見方を変えれば次世代に犠牲を強いることでもあり、

その結果が、少子化の一要因となっているのではないでしょうか。



※1 京都ぎらい 井上章一 朝日新書 2015
※2 東京都中央卸売市場 偏見・差別について
※3 生と死の民俗学 2016.07
    板橋春夫 先生 新潟県立歴史博物館参事
    放送大学文京学習センター
※4 21世紀批評理論における4つのターン 2019.03
    大橋洋一教授退職記念特別講義
    東京大学文学部法文2号館2階1番大教室(本郷キャンパス)
    東京大学大学院人文社会系研究科・文学部 現代文芸論研究室
※4 原発ジプシー 増補改訂版 ―被曝下請け労働者の記録 堀江邦夫 現代書館 2011
※4 映画「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」 1985 森崎東監督
※5 菊と刀 ルース ベネディクト. 角田安正(訳) 光文社古典新訳文庫 2008
※6 タテ社会の人間関係 中根千枝 講談社現代新書 1967
※7 劣化するオッサン社会の処方箋 なせ一流は三流に牛耳られるのか
    山口周 光文社新書 2018



○日本人の精神性を探る|美徳が強調されてきた社会


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誰がために鐘は鳴る
その鐘はあなたのために鳴っている

ヘミングウェイの小説「誰(た)がために鐘は鳴る(For Whom the Bell Tolls)」
のタイトルは、ジョン・ダンの「瞑想」から引用されたそうです


※「瞑想」 17 ジョン・ダン (イギリスの詩人・聖職者, 1572-1631年)
  「MEDITATION」 XVII John Donne

No man is an island entire of itself; every man is a piece of the continent,

a part of the main; if a clod be washed away by the sea, Europe is the less,

as well as if a promontory were, as well as any manner of thy friends or of

thine own were; any man's death diminishes me, because I am involved in

mankind. And therefore never send to know for whom the bell tolls; it tolls

for thee.



《ホームページ管理者による意訳》

誰も孤島ではない。すべての人は大陸の一部だ。もしひとかけらの土が波に

洗われたなら、それはヨーロッパの岬が失われたのと等しい。あなたの友人や

あなたの物を失うのに等しい。誰かを失うのは自らを損なう。なぜなら、つな

がっているからだ。それゆえ、誰(た)がために鐘は鳴る(⇒弔(とむら)いの鐘は

誰のために鳴っているのか⇒私には関係のないことだ)と言ってはならない。

その鐘はあなたのために鳴っているのだから。



※共感できない人が隣にいる。ライン交換、どうしますか? 2019.07
 ロバート・キャンベル 先生 東京大学名誉教授・国文学研究資料館館長
 教養学部創立70周年記念シンポジウム
 「学際知の俯瞰力−東京大学駒場スタイル」
 東京大学駒場Tキャンパス講堂(900番教室)



○私たちの生涯|生と死の狭間にある「時」を歩む


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朝は来る、だがまだ夜だ
もし尋ねたければまた来て尋ねるがよい

暗黒星雲のひとつ、馬頭星雲 NASA


※イザヤ書 21章 11・12節


見張りの者よ、夜の何どきか

見張りの者よ、夜の何どきか

見張りの者は答える

朝は来る、だがまだ夜だ

もし尋ねたければまた来て尋ねるがよい


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Sunny Day Ahead
夜はいつか終わる

The dawning break, Sleepless I dream of the day.


※「Endless Night」 (a portion of the lyrics)
 Broadway Musical 「The Lion King」, Walt Disney
 Lyrics by Julie Taymor, Music by Lebo M, Hans Zimmer, and Jay Rifkin
 Performed by Jason Raize



I know that the night must end

And that the sun will rise

And that the sun will rise



I know that the clouds must clear

And that the sun will shine

And that the sun will shine



○光は闇の中で輝く|世代とジェンダーを越えて発展する


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Nick Afoa - Endless Night.
終わりなき夜|ミュージカル「ライオン・キング」

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薄暗い青い点
地球

1990年、ボイジャー1号が撮影した太陽系の連続写真(39枚)
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1977年に打ち上げられたNASAの無人宇宙探査機、ボイジャー1号(Voyager 1)。

木星・土星を探査し、2013年には太陽系を脱出して2019年現在も飛行を続けて

いるそうです。



打上げから13年を経た1990年。太陽からおよそ60億km離れた地点に到達したボイ

ジャー1号は、太陽系の惑星を捉えた39枚の写真を地球に送信してきました。(上記

画像をクリックすると拡大表示します)



右側から、「N」は海王星(NAPTUNE)、「U」は天王星(URANUS)、「S」は土星

(SATURN)、「V」は金星(VENUS)、「E」は地球(EARTH)、「J」は木星(JUPITER)。



最も遠いところから撮影された地球を見て、アメリカの天文学者カール・セーガン

(Carl Edward Sagan, 1934-1996)博士は、「Pale Blue Dot (薄暗い青い点)」と

呼んだそうです。


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Pale Blue Dot - Japanese sub (カール・セーガン、日本語字幕)

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私たちは宇宙の中心か?
You are Here

https://ppc.fandom.com/wiki/File:You_are_here_galaxy.jpg


私たちの住む地球、そして人間は、どうやら中心ではないようです。



○人類から遠く離れた孤独の中に住む世界の本質


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あるがままの調和のとれた
美しさ

内村鑑三(うちむら かんぞう、1861-1930年)


※「ぼくはいかにしてキリスト教徒になったか」 内村鑑三. 河野純治(訳)
  光文社古典新訳文庫 2015 第七章 キリスト教国にて−慈善家たちの中で


自分が生れた国(⇒日本)に対するぼくの見方は、まだそこにいるあいだは、

ひどく偏っていた。まだ異教徒(⇒日本の宗教:儒教・神道・仏教を信じる人)

だった頃、ぼくにとってわが国は宇宙の中心であり、世界の羨望の的だった。

「土地は五穀が豊かに実り、気候は世界一穏やかで、風光明媚、海や湖は

乙女の瞳のようであり、松林に覆われた丘は乙女の三日月形の眉のようで

ある。国土は精気にあふれ、まさに神々の住まいであり、光の泉だ」

まだ異教徒だった頃のぼくは、言ってみれば、自分の国をそんな風に考えて

いた。それが「改宗」してみると、まったく正反対の見方をするようになった!

(p187-188)




…しかし、遠い外国の地から眺めてみると、自分の国はけっして「役に立たない

国」ではなかった。すばらしく美しい国に見えるようになった−その美しさは、

ぼくが異教徒だった頃の異様な美しさではなく、あるがままの調和のとれた

美しさであり、その独特の歴史的個性で、宇宙の一定の空間を占めていた。

(p190)


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守られて生きる
すべてに感謝

「祈りの手」(1508) アルブレヒト・デューラー(1471-1528)
ウイーン・アルベルティーナ美術館


※坂村真民全詩集 第7巻 「感謝」



感謝

すべてに感謝

守られて生きる

幸せを思い

進んで

良いことをしよう

皆が見てくださる





※臨済宗円覚寺派大本山 円覚寺
 塔頭「黄梅院(おおばいいん)」入口にある掲示板より 2019.06



○花を忘れまい|北条時宗が開いた北鎌倉の座禅道場 円覚寺


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昔にさかのぼって
いにしえの優れた人を友とする

孟子(もうし)|性善説を唱えた中国・戦国時代の思想家


※「孟子 全訳注」 宇野精一(訳) 講談社学術文庫 2019
 万章下篇 p334-445


孟子(もうし)が万章(ばんしょう、孟子の弟子)に話して聞かせた。「一郷(いっきょう)

での優れた人物は、同じ一郷の優れた人物を友とし、一国内での善士は、同じ一

国内の善士を友とし、天下の善士は、天下の善士を友とするものだ。天下の善士

を友としてもなお満足しないときは、さらに昔にさかのぼって、いにしえの善士を友

とする。いったい、古人の詩を吟唱(ぎんしょう)し、その書を読んでも、その人物を

知らないでよかろうか。だからその古人の時代を研究して、その環境・行状を知ら

ねばならぬ。これがすなわち尚友(しょうゆう⇒優れた古人を友とする)というもの

である。」



○日本人の心を形成してきたもの|これからを生きる指針となるものを探る


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参  考  情  報


○横浜市立大学所蔵の古地図データベース | 横浜市立大学学術情報センター

○JAMSTEC×Splatoon 2『Jamsteeec(ジャムステ〜ック)』

○国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ

○がんサバイバー・クラブ

○京都北山丸太生産協同組合

○天台宗 青蓮院門跡

○公益社団法人 関西吟詩文化協会 - 詩吟を通して社会に貢献する

○江戸ガイド - 江戸時代のさまざまなトリビアを紹介!

○坂村真民記念館 公式サイト | 癒しの詩人 坂村真民の世界

○居士林だより 円覚寺

○魅力的なフリー画像 - Pixabay

○画像検索 & 無料写真- PxHere

○Wikipedia

○宇宙からみた生命史 2019.06
 講師 小林憲正 先生 横浜国立大学教授
 放送大学神奈川学習センター

○宇宙からみた生命史 小林憲正 ちくま新書 2016

○明治の教科書にみられる「人種」・「民族」記述 2019.05
 講師 竹沢泰子 先生 京都大学人文科学研究所教授
 人種主義・反人種主義の越境と転換
 京都大学人文科学研究所 国際シンポジウム
 フランス国立社会科学高等研究院 × 京都大学・人文科学研究所
 京都アカデミアフォーラム in 丸の内

○比較行動学('11) ─ヒト観の再構築─
 主任講師 藤田和生 先生 放送大学客員教授・京都大学大学院教授

○初歩からの生物学('18)
 二河成男 先生 放送大学教授
 加藤和弘 先生 放送大学教授

○日本の野生動物は減っている?増えている? 2019.04
 講師 杉浦秀樹 先生 京都大学野生動物研究センター准教授
 会場 京都大学東京オフィス
 第105回京都大学丸の内セミナー

○人口から読む日本の歴史 鬼頭宏 講談社学術文庫 2000

○林における鳥獣被害対策のためのガイド
 −森林管理技術者のためのシカ対策の手引き(平成24年3月版)
 林野庁 森林保護対策室

○農地面積等の推移|耕地及び作付面積統計 農林水産省 平成27(2015)年

○古都 川端康成 新潮文庫 1968

○教科書で読む名作 伊豆の踊子・禽獣ほか 川端康成 ちくま文庫 2017

○哀愁 川端康成 「裸形の魂の天翔る姿」

○山の音 川端康成 新潮文庫 1957

○生きていく民俗 生業の推移 宮本常一 河出文庫 2012

○森が育む日本の生物多様性と私たちの生活 2017.10
 講師 五箇公一 先生 国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター室長
 会場 ヤクルトホール
 国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所
 平成29年度公開講演会「木を使って守る生物多様性」

○京都ぎらい 井上章一 朝日新書 2015

○南米小型サルが切り開く新たな研究 2019.07
 中村克樹 先生 霊長類研究所教授
 第108回 京都大学丸の内セミナー

○がん予防とがん生存者の運動 2019.06
 西端泉 先生 川崎市立看護短期大学 教授
 放送大学神奈川学習センター

○核軍縮と日本 2017.12
 講師 浅田正彦 先生 (京都大学法学部法学研究科 教授)
 会場 京都アカデミアフォーラム in 丸の内
 国際社会の中の日本─世界との関係・日本の現状─
 京都大学「東京で学ぶ 京大の知」シリーズ26

○人間の条件 ハンナ・アレント 志水速雄(訳) ちくま学芸文庫 1994

○「サル化」する人間社会 山極寿一 集英社インターナショナル 2014

○荘子 (内篇・外篇・雑篇) 福永光司・興膳宏(訳) ちくま学芸文庫 2013

○老子 福永光司(訳) ちくま学芸文庫 2013

○老子 蜂屋邦夫(訳) 岩波文庫 2008

○孟子 全訳注 宇野精一(訳) 講談社学術文庫 2019

○飲食男女―老荘思想入門 福永光司. 河合隼雄 朝日出版社 2002

○働きざかりの心理学 河合隼雄 新潮文庫 1995

○人文研アカデミー2019 本づくりの舞台裏 2019.06
 「京大人文研東方学叢書」を語る in 東京−
 ・老荘思想は役に立つのだろうか、そもそも読書は有益か
  古勝隆一 先生 京都大学准教授
 ・「書くこと」の意味を求めて−前近代中国における文学観の一斑
  永田知之 先生 京都大学准教授
 ・仏教修行者の内面的な信仰を客観的に描写する
  船山徹 先生 京都大学教授
・主催 京都大学人文科学研究所
・共催 株式会社 臨川書店
・会場 明治大学リバティタワー 3階1032教室

・一斑(いっぱん) … 全体からみてわずかな部分

○日本の「ダーク・ツーリズム」:グローバル、国、市民の視点から 2019.06
 ・講師 アンドルー・ゴードン 先生 ハーバード大学教授
 ・鼎談(ていだん⇒三人が向かい合って話をすること)
  アンドルー・ゴードン 先生 ハーバード大学教授
  チョルヒ・パク 先生 ソウル大学教授
  吉見俊哉 先生 東京大学教授
 会場 東京大学・鉄門記念講堂
 TOKYO COLLEGE

○共感できない人が隣にいる。ライン交換、どうしますか? 2019.07
 ロバート・キャンベル 先生 東京大学名誉教授・国文学研究資料館館長
 教養学部創立70周年記念シンポジウム
 「学際知の俯瞰力−東京大学駒場スタイル」
 東京大学駒場Tキャンパス講堂(900番教室)

○完訳 グリム童話集5 橋健二(訳) 小学館ファンタジー文庫 2009

○ぼくはいかにしてキリスト教徒になったか 内村鑑三. 河野純治(訳)
 光文社古典新訳文庫 2015

○代表的日本人 内村鑑三. 鈴木範久(訳) 岩波文庫 1995

○坂村真民全詩集 (第7巻) 大東出版社 2001

○國學院大學 國學會春季大会 2019.06
・春町と不埒−黄表紙作者の狂歌活動
 中村正明 先生 國學院大學准教授
・芭蕉俳諧と漢詩文−断章取義の実態−
 塚越義幸 先生 國學院大學栃木短期大学教授
・会場 國學院大學130周年記念5号館

○芭蕉の学力 田中善信 新典社選書49 2012

○100年後の地球に私たちは何ができるか 2019.06
 第56回東京大学農学部公開セミナー
 ・One Earth Guardians育成プログラムが目指すもの
  応用動物科学専攻 高橋伸一郎 教授
 ・人類はこれまで地球に何をしてきたか
  水圏生物科学専攻 潮秀樹 教授
 ・バイオエコノミーはSDGsの達成にどう貢献するか
  生物材料科学専攻 五十嵐圭日子 准教授
 会場 東京大学弥生講堂・一条ホール

○レジリエンスの諸相('18)−人類史的視点からの挑戦−
 主任講師
  奈良由美子 先生 放送大学教授
  稲村哲也 先生 放送大学特任教授

○ヨーロッパ地方自治憲章の挑戦 −地方自治権の国際的保障 2019.07
 講師 廣田全男 先生 放送大学客員教授、横浜市立大学名誉教授
 放送大学神奈川学習センター

○英国のEU脱退(Brexit)の法的諸問題―英国・EU双方の視点から 2019.07
 講師 中村民雄 先生 早稲田大学法学学術院教授
 会場 明治大学リバティタワー
 主催 明治大学国際連携本部 英国研究イベント 連続講演 on Brexit 第3回


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