英国500年の美術に触れる テート・ブリテン ありのままの人間の営み |
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| テートブリテン | クロー・ギャラリー | ターナー | 海の漁師たち | 難破船 | 青白い馬にのった死 | | イタリアの陽光と色彩 | カルタゴ帝国の衰退 | レイトターナー展 | 英国500年の芸術史 | ラファエル前派 | | 良心の目覚め | マリアナ | シャロット姫 | プロセルピナ | オフィーリア | 最愛の人 | カフェテリア | | ありのままの人間の営み | 参考情報 | |
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イギリス美術を展示する テートブリテン |
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ネオ・ゴシック様式の建物 TATE BRITAIN | |||
テムズ川に沿ったミルバンクに建つテイト・ギャラリー。 実業家ヘンリー・テイトのコレクションをもとに、 ロンドン・ナショナルギャラリーの分館として1897年に開館したそう。 2000年には、近現代美術専用のテート・モダンがサウス・バンクに開館し、 ミルバンクの建物はイギリス美術専門の美術館となり、 「テート・ブリテン」に名称を改めたそうです。 ○共に居ること、創ること|影響を受け、影響を与えてきたイギリス ○日本唯一のネオ・バロック様式 迎賓館赤坂離宮 |
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ターナーコレクションが展示される クロー・ギャラリー |
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Clore Gallery | |||
数々の風景画生み出し、英国最高の巨匠と称される ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(Joseph Mallord William Turner 1775-1851)。 所有していた自作は「一つの入れ物」で展示するよう遺言に残し、 死後、国家に遺贈したそう。 その遺言は、1987年テイト・ブリテン内のクロー・ギャラリーによって実現。 300点ほどの油彩画や約2万点のデッサン・スケッチが収蔵されているそうです。 |
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自然の巨大さや荒々しさ、神秘性を表現した ターナー |
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Self-Portrait 1799 JMW Turner 1775-1851 | |||
1775年、ロンドンのコヴェント・ガーデンに 理髪師の子として生まれたというターナー。 史上最年少27歳にしてイギリスのロイヤル・アカデミー正会員 となったターナーは、生涯を通じて風景画を描き続けたといいます。 当時、風景画は名所や理想的風景を描くのが主流だったそうで、 ターナーは、そのような世界に自然の巨大さや荒々しさ、 神秘性を持ち込み、ロマン主義を代表する画家になっていったそう。 |
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圧倒的な自然の力 海の漁師たち |
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Fishermen at Sea exhibited 1796 Joseph Mallord William Turner |
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船から照らす脆弱なランタンの光を頼りに暗がりの海に出航する漁師たち。 海を照らす月明かりとは対照的です。 左に見えるギザギザのシルエットは、ワイト島の針と呼ばれる難所。 自然の圧倒的な力と人間である漁師の運命を暗示しているかのようです。 ○ワイト島で開催される伝統的なヨットレース カウズ ウィーク ○光る海に霞む船の汽笛を遠くに聞きながら|葉山⇔伊勢ヨットクルーズ ○人と自然の共生|野外活動に触れ、生きる力を研ぎ澄ます |
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自然の驚異になすすべがない人間の姿 難破船 |
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The Shipwreck 1805 Joseph Mallord William Turner |
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荒れ狂う海で難破した船。 そこから小舟で脱出しようとしている姿が描かれています。 |
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封印が解かれた時に現れる四騎士のひとつ 青白い馬にのった死 |
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Death on a Pale Horse 1825-35 Joseph Mallord William Turner |
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※新約聖書 ヨハネの黙示録 6章 7-8節 小羊が第四の封印を解いた時、 第四の生き物が「きたれ」と言う声を、わたしは聞いた。 そこで見ていると、見よ、青白い馬が出てきた。 そして、それに乗っている者の名は「死」と言い、それに黄泉が従っていた。 小羊(キリスト)が解く七つの封印のうち、 四つの封印が解かれた時に現れるという四騎士。 四騎士はそれぞれが、地上の四分の一を支配し、 剣と飢饉と死・獣により、地上の人間を殺す権威を与えられています。 ○生者の国と死者の国の境 黄泉比良坂 ○急激な近代化を遂げてきた日本|近代化の象徴 競馬 |
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イタリアの明るい陽光と 色彩に魅せられたターナー |
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Rome,from the Vatican, Raffaelle, Accompanied by La Fornarina, Preparing his Pictures for the Decoration of the Loggia exhibited 1820 |
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「ヴァティカンから望むローマ、ラ・フォルナリーナを伴って 回廊装飾のための絵を準備するラファエロ」。 1820年、ターナー45歳の時の作品だそう。 初めてイタリアに赴いたターナーは、 戻ってきて直ぐにこの作品を描いたといいます。 絵画の中には、頬杖をついて思いをめぐらすラファエロの姿と、 かつてラファエロが愛したパン屋の娘、フォルナリーナが描かれています。 ○そよ風に乗ってローマの街並みへ ○地中海の風に誘われて宝石のような街並みへ |
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カルタゴ帝国の 衰退 |
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The decline of the Carthaginian Empire... exhibited 1817 | |||
古代ローマの詩人ウェルギリウスが記したという叙事詩「アエネーイス」。 「カルタゴの衰退」は、アエネーイスに記されたカルタゴの女王ディドの 伝説的古代史を基に描かれているそうです。 |
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ターナー晩年の作品を展示する レイトターナー展 |
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2014年9月10日〜2015年1月25日 | |||
2014年9月10日〜2015年1月25日の期間で開催されている 特別展「LATE TURNER PAINTING SET FREE」。 ターナーの晩年である1835年から亡くなる1851年までに 制作された絵画が展示されています。 晩年のターナーは、抽象的で自由奔放な画風へと変化してゆき、 当時の批評家から「とうとう本当に気がおかしくなった」と酷評されたそう。 |
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First Look: The EY Exhibition: Late Turner | |||
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英国500年の美術に触れる Meet 500 years of British Art |
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1840年代の部屋 | |||
2013年、2年に亘る改修を経てリニューアルオープンしたというテートブリテン。 1897年に建てられたエドワード7世様式を踏襲しながらも、 アールデコの扇形模様で飾られたらせん階段を新設するなど 伝統と革新を融合させるイギリス流がいかんなく発揮されているといいます。 それに伴い展示方法を年代順に一新。 1545年ジョン・ベッツ「黒い帽子をかぶった男」から、 2002年のアフリカ木彫インスタレーションまで、 床に示された10年ごとの年号をたどれば、英国500年の美術に触れることができます。 ○イギリスの物語と街並みに触れる Books about Town ○本物の作品で日本の文化史がたどれる東京国立博物館 |
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Meet 500 years of British Art - Director's Highlights: Penelope Curtis | |||
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ありのままの自然を見つめようとした ラファエル前派 |
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Beata Beatrix 1864-70 Dante Gabriel Rossetti 1828-1882 |
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レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロと並び、 ルネサンスを代表する芸術家ラファエロ。 以降、アカデミーではラファエロの構図や色彩などが 規範になっていったといいます。 19世紀、ロイヤル・アカデミーで学ぶ3人の学生、 ジョン・エヴァレット・ミレイ(1829-96)、 ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ(1828-82)、 ウィリアム・ホルマン・ハント(1827-1910)を中心に、 ラファエロの形式だけを踏襲するアカデミズムに反発し、 ラファエロ以前の率直で誠実な初期ルネサンス絵画を理想とした 「ラファエル前派(Pre-Raphaelite Brotherhood)」を結成したそうです。 彼らは自然をありのままに見つめ、その姿を正確に写しだす リアリズムに徹した画面を作り上げたそう。 ○肉体は滅んでも、霊魂の救済を信じて|ベアタ・ベアトリクス |
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陽光に輝く庭を見つめる 良心の目覚め |
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The Awakening Conscience 1853 William Holman Hunt |
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裕福な男の愛人として過ごしてきた女性。 男性の膝の上に乗り、じゃれながら歌う「Oft in the Stilly Night」 を聴くうちに、清らかな少女時代を思い出し、 悔悛する瞬間が描かれているそうです。 女性は男の膝から立ち上がり、陽光に輝く庭を見つめている様子が、 背後にある鏡を通して伺えます。 鏡は女性の心を映しているようにも思えます。 左にあるテーブルの下には小鳥を弄ぶ猫が描かれ、 二人の関係を暗示しているようです。 ○画家ゴヤが見つめてきた人間の光と影 |
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Oft in the Stilly Night - Thomas Moore | |||
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塀に囲まれた屋敷で孤独に過ごす マリアナ |
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Mariana 1851 John Everett Millais 1829-1896 |
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※「マリアナ」アルフレッド・テニソン 対訳テニスン詩集 西前 美巳 岩波文庫 夜の真っ只中に、乙女は目覚めて夜鳥の鳴く声を聞き、 雄鶏は夜明けの一刻前に鳴き、暗い沼地からは牡牛たちの声が 乙女のところに聞こえてきた。 好転の望みも失せて、夢の中でさえ乙女は侘しく歩むように思えた。 やがて冷たい風が灰色の眼の暁を目覚まし、 濠をめぐらした寂しい屋敷にも朝がやってきた。 乙女はただ「今日は侘しいわ。あの人が来ないから」と言った。 乙女は言った、「寂しくて、寂しくてしようがない。もういっそ死んでしまいたい!」 ヴィクトリア朝時代の詩人アルフレッド・テニスンが、 シェイクスピアの戯曲『尺には尺を(Measure for Measure)』から 着想を得て詠んだという詩「マリアナ」。 婚約者に捨てられ塀で囲まれた館で孤独に過ごすマリアナ。 婚約者が戻ってくることを信じる女性心理が描かがれているといいます。 ○いつまでも待ち続ける可憐な女性の心|能「井筒」 ○命から生まれた嘆き・希望・美しさ 世界の民族音楽 |
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鏡を通してしか外を知ることができない シャロット姫 |
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The Lady of Shalott 1888 John Willian Waterhouse 1849-1917 |
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外の世界を見ると死んでしまう呪いをかけられたため、 鏡を通してしか外の世界を知ることができないシャロット姫。 ある日、心を寄せるランスロット卿(きょう)が川のほとりで歌う声に惹かれ、 外の世界を覗いてしまいます。 ランスロット卿を追い舟に乗り、岸まで行こうとしたシャロット姫。 船の前部に立てられた3本のローソクのうち2本は炎が消え、 彼女の死が近いことを暗示しています。 ランスロット卿のいる岸に舟が着いたときには、息絶えていました。 |
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囚われの女神に託された人妻への狂おしい愛情 プロセルピナ |
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Proserpine 1874 Dante Gabriel Rossetti 1828-1882 |
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ユピテルと豊穣の女神ケレスの娘プロセルピナ。 (ギリシア神話のペルセフォネ) 冥界の王プルートに見初められ、地下の冥界へと連れ去られてしまいます。 プロセルピナは冥界の柘榴(ざくろ)の実を食べたため、 地上に戻ることができなくなりますが、ユピテルにより一年の半分は 地上に戻ることが許されます。 ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティが描いた「プロセルピナ」。 モデルは工芸家ウィリアム・モリスの妻ジェインで、 ロセッティとは不倫関係にあったといいます。 夏はオックスフォードシャーでロセッティと過ごし、 冬はロンドンで夫と過ごしたというジェインは、 冥界と地上を行きかうプロセルピナのようです。 ○プロセルピナに通じる源氏物語の登場人物 秋好中宮 |
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祈りの歌を口ずさみ死を迎える オフィーリア |
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Ophelia 1851-1852 John Everett Millais 1829-1896 |
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ウィリアム・シェイクスピアの悲劇「ハムレット」に登場する少女、オフィーリア。 ミレイの絵画では、悲しみにくれ溺死するオフィーリアの姿が描かれています。 死を目前に迎え「祈りの歌」を口ずさむオフィーリア。 両腕を左右に広げるポーズは「オランス」と呼ばれ、 初期キリスト美術に見られる祈りを捧げる姿だそう。 「オランス」は、救済を祈る殉教者などとして描かれ、 後には霊魂と天国における至福を象徴するようになったといわれます。 ○移ろいゆく映画の灯り|人間が持ちあわせている想いに出会う |
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愛と結婚 最愛の人 |
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The Beloved(The Bride) 1865-1866 Dante Gabriel Rossetti 1828-1882 |
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※旧約聖書 雅歌 1-2・1-2 どうか、あなたの口の口づけをもって、わたしに口づけしてください。 ぶどう酒にもましてあなたの歌は快く。 あなたの香油、流れるその香油のように、あなたの名はかぐわしい。 おとめたちはあなたを慕っています。お誘いください、わたしを。 ※旧約聖書 雅歌 4-16・5-1 北風よ、目覚めよ。南風よ、吹け。 わたしの園を吹き抜けて、香りを振りまいておくれ。 恋しい人がこの園をわがものとして、この見事な実を食べてくださるように。 わたしの妹、花嫁よ、わたしの園にわたしは来た。 香り草やミルラを摘み蜜の滴るわたしの蜂の巣を吸い、 私のぶどう酒と乳を飲もう。 友よ食べよ、友よ飲め。愛する者よ、愛に酔え。 「最愛の人(The Beloved(The Bride))」は、 愛と結婚がテーマとなっている旧約聖書・雅歌(がか)を題材にしているそう。 ○私たちの身近に寄り添う「愛と人間性」の芸術 ミュージカル ○彼は死に勝ち甦る、神への感謝・賛美 オラトリオ「メサイア」 |
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鑑賞に思いを巡らせる カフェテリア |
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Djanogly Cafe Tate Britain | |||
自然の巨大さや荒々しさ、神秘性を表現したターナー、 ありのままの自然を見つめようとしたラファエル前派の作品を中心に、 英国500年の美術を垣間見てきました。 絵画を通して、その時代に起きた出来事や社会的背景、 画家の想い、そして文化や思想の変遷に触れると 視野が広がり感受性がときますされるような感覚にとらわれます。 ○明日への架け橋|新しい芸術 アール・ヌーヴォーの時代 ○世界の美術が凝縮されたメトロポリタン美術館 ○現代を見据えるニューヨーク近代美術館 |
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ありのままの 人間の営み |
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Tate Britain | |||
圧倒的な自然の驚異になすすべがない人間の姿、 鏡を通して見え隠れする希望と絶望、 孤独と愛、そして死。 長きに渡り営んできた人間本来の姿のようです。 ○ありのままの自分 Here I stand and here I'll stay ○光は闇の中で輝く|世代とジェンダーを越えて発展する ○つながりの森|自分が人生の主人公 |
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参 考 情 報 | |||
○Tate Britain | Tate ○アルフレッド・テニソン|青空文庫 ○ダンテ・アリギエリ|青空文庫 ○日本シェイクスピア協会 The Shakespeare Society of Japan ○John William Waterhouse Oil Paintings ○鏡―見る者が創り出す不思議 - 東京大学総合研究博物館 ○名著33 「旧約聖書」:100分 de 名著 ○篠崎キリスト教会 - 雅歌 ○新約聖書「ヨハネの黙示録」講義 ○an east window 夜明けとなって、夜明けの明星が心の中に上がるまで ○ヴァーチャル絵画館 ○Web Gallery of Art ○足立区綾瀬美術館 annex ○弐代目・青い日記帳 ○美術館・博物館・イベント・展覧会 [インターネットミュージアム] ○加藤諦三ホームページ Taizo Kato Official Website ○フリー百科辞典Wikipedia ○ターナー展 Turner from the Tate: the Making of a Master 東京都美術館 2013年10月8日〜12月18日 ○テート美術館の至宝 ラファエル前派展 英国ヴィクトリア朝絵画の夢 森アーツセンターギャラリー 2014年1月25日〜4月6日 ○英国ヴィクトリア朝絵画の巨匠 ジョン・エヴァレット・ミレイ展 Bunkamura ザ・ミュージアム 2008年8月30日〜10月26日 ○ウフィツィ美術館展 黄金のルネサンス ボッティチェリからブロンヅィーノまで Arte a Firenze da Botticelli a Bronzino: verso una ‘maniera moderna’ 東京都美術館 2014年10月11日〜12月14日 ○週間世界の美術館 24 テイト・ギャラリー ○対訳テニスン詩集―アルフレッド・テニスン, 西前美巳(編) 岩波文庫 ○草枕 夏目漱石 ○旧約聖書・雅歌の学び -Welcome to Calvary Chapel-Japanese Fellowship ○木を見る西洋人 森を見る東洋人 思考の違いはいかにして生まれるか リチャード・E・ニスベット, 村本由紀子(訳) ダイヤモンド社 ○木を見る西洋人・森を見る東洋人 ・講師 東京大学准教授 村本由紀子 先生 ・シラバス ・異文化を知るということ ・目に映る世界のかたち:知覚・思考様式の文化差 ・西洋的な自己、東洋的な自己 ・社会の現場に表れた文化差 ・信頼社会のアメリカ、安心社会の日本 ・甘え、情、恨…アジアの文化的概念 ・文化の多層性、多様性:「欧米 vs. アジア」を越えて ・文化に生きる、文化を創る ・放送大学 神奈川学習センター ○たかが発音されど発音の音声学 ・講師 横浜国立大学教授 吉田昌平 先生 ・シラバス ・口腔断面図 ・子音のつくられる場所(調音点) ・母音のつくられかた ・産出とディクテーション ・日本語の音声学 ほか ・放送大学 神奈川学習センター ○「日本型うつ病社会」の構造 心理学者から見た停滞する日本の現状と未来 加藤諦三著 PHP研究所 ○博物館経営論 放送大学 佐々木亨 北海道大学大学院教授 亀井 修 国立科学博物館産業技術史資料情報センター参事 |
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