人間の光と影

スペインを代表する画家ゴヤが見つめてきた光と影


| 着衣のマハ | 日傘 | フランスに侵攻されたスペイン | フランス軍の報復 | 理性の眠りは怪物を生む |
| 理性を拒む愚かな男たち | 心を見透かす | 信仰と魔術の対立 | 妖術師の夜宴 |
| わが子を食らうサトゥルヌス | ロス・カプリーチョス | ロバの衆 | 闘牛場で起こった悲劇 |
| フランシスコ・デ・ゴヤ | プラド美術館 | 国立西洋美術館 |
 参考情報 |

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挑発するような眼差しを投げかける
マハ

着衣のマハ 1800-07年 プラド美術館


スペインを代表する画家フランシスコ・デ・ゴヤ。

「着衣のマハ」は、「裸のマハ」とともにゴヤを代表する作品だそうです。



トルコ風の衣装を着た若い女が、両手を頭の後ろに組んで寝椅子に横たわり、

挑発するような眼差しを投げかけています。



「マハ」というのは、スペイン語で小粋な女性を意味するそう。

男性は「マホ」と呼ばれるそうです。



○大スキャンダルとなったエドゥアール・マネの「オランピア」

○様々な「美」に触れて


着衣のマハ 裸のマハ
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身分階級の差を暗示するという
日傘



手に扇子を持ち子犬を膝の上に乗せて座っている若い女性。

華やかな衣装と黄色のスカートを身にまとっています。



その背後で、日傘をもち影をつくる男性は、粋な男を意味するマホのよう。

マホは下流階級の人間だそうで、若い女性との身分の差も暗示しているようです。


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ナポレオンに侵攻された
スペイン

カルロス4世の家族 1800-01年 プラド美術館


スペイン・ブルボン朝の王カルロス4世とその家族たち。



中央から右側前列に立つのがカルロス4世、中央の女性は王妃マリア・ルイサ。

そして左側から2人目が、後にスペイン王に即位するフェルナンド7世。



カルロス4世は政治に関心がなく、

実権はマリア・ルイサと宰相マヌエル・デ・ゴドイの二人が握っていたそう。



1789年にはフランス革命が勃発し、

スペイン王位は、ナポレオンの兄ジョゼフがホセ1世として即位することに。


やがて、スペインの人々はフランスの支配に対して独立戦争を起こします。


ナポレオンがロシア遠征に失敗するとフランス軍はスペインから撤退し、

代わってフェルナンド7世がスペイン王に就いたそうです。



○ノートルダム大聖堂にて行われたナポレオンの戴冠

○ナポレオンに捧げようとした交響曲「英雄」


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反乱に対するフランス軍の報復

1808年5月3日、プリンシペ・ピオの丘での銃殺 1814年 プラド美術館


フランスによるスペイン征服への反乱に対する報復として、

ナポレオン軍の銃殺隊が、マドリッドの愛国者を処刑する場面を描いた作品。



フランス兵士らは右側に位置し背を向け、

今まさに殺されようとしているマドリッド市民に銃を向けています。



連作とされる「マドリッド、1808年5月2日」と併せて、

この作品は1814年のルイ18世によるブルボン朝の王政復古時に制作されたそう。



○フランス革命によりギロチンの刑となったマリー・アントワネット


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理性の眠りは怪物を生む

理性の眠りは怪物を生む 国立西洋美術館


眠っている画家の背後にコウモリやミミズクなど闇の動物が現われています。

理性を眠らせ現実に目をつむれば、悪魔たちが跳梁(ちょうりょう)し始めるそう。



○内面の美が備わった花、芍薬


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理性を拒む愚かな男たち

魔女たちの飛翔 1797-98年頃 プラド美術館


三角帽子の3人が若者を取り囲み、光(理性)に向かって上昇しています。

3人は若者に智恵を注入しているそう。



一方地上では、一人は地面に伏せ耳をふさぎ、もう一人は白い布を被り、

理性を拒む愚かな男たちが描がれているそうです。


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心を見透かす

掃除をしている若い女<素描帖A>(n) 1794-95年頃 プラド美術館


着飾った服に身を包み掃除をしている若い女性。



裕福な生活を望み、富豪の夫と結婚するも、

画の中では、夫は牡牛にみたてられ、その下にはカゴがあります。



○全てを見透かすかのようなイエスの視線、ユダの接吻


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信仰と魔術の対立

アルバ女公爵と“ラ・ベアタ” 1795年 プラド美術館


スペイン13代公爵であったアルバ女公爵。

美しく機知に富み魅力ある女性だったそう。



画のタイトルとなっている「ラ・ペアタ」は、「心身深い女」という意味があるそうです。



信仰と魔術の対立を表現しているという画には、

後ろ向きのアルバ女公爵が信心深い老召使に

珊瑚の魔除けを押し付けて怖がらせているところだそう。



○美の裏にある毒に冒され、破滅に向かう男たち


アルバ女公爵
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妖術師の夜宴



「聾者(ろうしゃ)の家」と呼ばれるゴヤの別荘に飾るために

描かれた14枚の壁画群は「黒い絵」といわれるそうです。



その「黒い絵」の中の一枚、「妖術師の夜宴」。

悪魔が牡山羊の姿で現れ、魔女たちの夜宴を主催しているそう。


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黒い絵の代表作
わが子を食らうサトゥルヌス

我が子を食らうサトゥルヌス 1819-1823年 プラド美術館


連作「黒い絵」の一点である、「我が子を食らうサトゥルヌス」。



ローマ神話に登場するサトゥルヌス(クロノス)が、

自分の子に殺されるという預言に恐れを抱き、

5人の子を次々に呑み込んでいったそう。



自己の破滅に対する恐怖から狂気に取り憑かれ、

自分の子を頭からかじり、食い殺す凶行に及ぶ様子が描かれているそう。



○ギリシア神話に登場する美しい女狩人アタランテ

○ギリシア神話に登場する吟遊詩人オルフェウス

○ポセイドンの息子パラミディスが建設したといわれる美しい港街


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当時の社会を風刺した
ロス・カプリーチョス

37番 弟子の方が物知りなのだろうか 1797-98年 プラド美術館


ゴヤの連作版画集、ロス・カプリーチョス。



カプリーチョスは「気まぐれ」を意味し、民衆・売春・政治・王家・迷信・魔女信仰など、

当時の社会を風刺したもの80点あるそうです。



上の版画は、「<ロス・カプリーチョス>37番 弟子の方が物知りなのだろうか」という作品。

ロバにみたてられ師弟は、人間の愚行を風刺しているそう。



○風刺や失敗談など滑稽を表現する「狂言」


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ロバの衆 愚鈍な者たち

先祖の代までも 39番のための準備素描 プラド美術館


ロバが先祖たちが描かれた血統書を掲げ、

自慢するように見せている様子を描いた作品だそう。



○我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか


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闘牛場で起こった悲劇

マドリード闘牛場の無蓋席で起こった悲劇と、トレホーン市長の死
国立西洋美術館


1801年6月15日、マドリード闘牛場の観客席に闘牛が入り、

トレホーン市長が亡くなった時の様子を描いたものだそう。



ゴヤはこの時、この場に居合わせていたそうです。



無蓋席(むがいせき)というのは、屋根のない観客席を指しているそうです。



○闘牛士エスカミーリョに恋をするカルメン

○今帰仁村(なきじんむら)で行われる闘牛


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スペインの巨匠
フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス



スペインを代表する画家、フランシスコ・デ・ゴヤ。



1746年、スペイン北東部サラゴーサ近郊のフエンデトドスで生まれ、

14歳の時から約4年間、サラゴーサで地元の画家に師事して絵画の修行。



28歳のときにマドリードに渡り、

サンタ・バルバラ王立タペストリー工場でタペストリーの下絵描きの仕事に携わった後、

40歳代にカルロス4世の宮廷画家となり、スペイン最高の画家としての地位を得たそう。



しかし、不治の病に侵され聴力を失ってしまいます。


その後、ナポレオン率いるフランス軍のスペイン侵攻、

スペイン独立戦争と動乱の時期を生き、

「マドリード、1808年5月3日」・「巨人」・版画集『戦争の惨禍』などの作品を手がけたそう。



78歳の時にフランスに亡命。

亡命先のボルドーにおいて82年の波乱に満ちた生涯に幕を閉じたそうです。



○色彩豊かで幻想的な画家 マルク・シャガール

○踊り子の画家 エドガー・ドガ

○幸福の画家 ルノワール

○光と影の魔術師 レンブラント


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スペイン・フランドル・イタリア絵画が充実している
プラド美術館



1819年、王立美術館として開館したというプラド国立美術館。



ハプスブルク、ブルボン歴代王家の趣味を反映し、

ゴヤやベラスケスなどのスペイン絵画、

フランドル、イタリアなどの外国絵画も充実しているそうです。



○印象派の殿堂、オルセー美術館

○ルネサンスやバロックの美、ボルゲーゼ美術館

○中華の歴史を語る故宮博物院


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国立西洋美術館で開催
プラド美術館所蔵 ゴヤ −光と影

国立西洋美術館の前庭にある「カレーの市民」 ロダン


「プラド美術館所蔵 ゴヤ −光と影」展は、国立西洋美術館にて開催。

2011年10月22日−2012年1月29日


 @かくある私 ゴヤの自画像
 A創意と実践 タピスリー用原画における社会批判
 B嘘と無節操 女性のイメージ
 C戯画、夢、気まぐれ ロス・カプリーチョスの構想段階における自由と自己検閲
 Dロバの衆 愚鈍な者たち
 E悪魔の群れ
 F国王夫妻以下、僕を知らない人はいない 心理研究としての肖像画
 G悲惨な成り行き 悲劇への眼差し
 H不運なる祭典 闘牛技の批判的ヴィジョン
 I悪夢 狂気と無分別
 J信心と断罪 宗教画と教会批判
 K闇の中の正気 ナンセンスな世界の幻影
 L怪奇な寓話
 M逸楽と暴力



○深く、恐ろしく真実を語るものであれ、近代彫刻の父・オーギュスト・ロダン

○国立西洋美術館 常設展の絵画

○国立西洋美術館の中庭から光が差し込む「カフェすいれん」


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参  考  情  報


○国立西洋美術館

○プラド美術館公式サイト|Museo Nacional del Prado

○スペイン政府観光局オフィシャルサイト

○ゴヤ連作全版画展図録|三重県立美術館

○東京富士美術館

○文化遺産オンライン|文化庁

○西洋絵画、西洋美術の画像・壁紙と解説 : サルヴァスタイル美術館

○闘牛の世界へようこそ

○フリー百貨辞典Wikipedia

○美術鑑賞履歴

○ゴヤT スペイン・光と影 堀田善衛 集英社文庫

○週刊 世界の美術館6 プラド美術館@

○美の旅人 スペイン編 伊集院静 小学館文庫

○美女たちの西洋美術史 肖像画は語る 木村泰司 光文社新書

○ブルボン王朝 12の物語 中野京子 光文社新書

○ハプスブルク家 12の物語 中野京子 光文社新書

○ギリシア・ローマ神話 トーマス・ブルフィンチ 野上弥生子訳 岩波書店


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