生と死のはざ間にある
「時」を歩む


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当たり前だけど
つい忘れがちな事実

「女の生の三段階」 グスタフ・クリムト
1905年 国立近代美術館 ローマ


■日本の平均寿命は4年連続で過去最高を更新



2009年の日本の平均寿命は女性が86.44歳、男性が79.59歳で、

いずれも4年連続で過去最高を更新したそうです。


地域でみると女性は25年連続で長寿世界一。

男性は前年の4位から5位へ後退しています。


厚生労働省 簡易生命表  日本経済新聞 2010.7.27



ちなみに、明治時代の平均寿命は39歳、

大正時代で43歳、昭和22年の時点で52歳だったそうな。



■人は生まれたときから、死に向かって歩んでいる


人は生まれたときから、着実に死にむかって歩み始めています。


その当たり前の事実を意外と忘れがちですが、

誰にでも「老い」そして「死」が訪れることを教えてくれるのがこの絵画。


幼な子が若い母親に抱かれている二人の傍(かたわ)らで、

手を顔にあてて嘆(なげ)く仕草の老女が立っています。



母子は、「老い」がすぐそばにいることにまったく気づいておらず、

気持ちよさそうに眠っています。



○今を生きる...


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若い女性と骸骨に託された
生と死の対比

「死と生」 グスタフ・クリムト
1911年以前 レオポルド美術館 ウィーン


■生きる力そのものを指している「エロス」



ギリシア神話における愛の神「エロス」は、

美の女神「アプロディテ(ビーナス)」の息子と言われています。


「クピド(キューピット)」や「アモル」の名でも呼ばれてる「エロス」は、

「生まれる力そのもの」を指しています。



■死の神「タナトス」


そして、ギリシア神話に登場する死の神「タナトス」。

「タナトス」は夜の女神「ニュクス」の息子であり、

眠りの神「ヒュプノス」の兄弟。



「エロス」と「タナトス」の対比は、生と死の対比を意味しています。



○静寂につつまれたお寺 鎌倉瑞泉寺


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美の裏にある毒に冒され
破滅に向かう男たち

「死刑囚に毒を試すクレオパトラ」 アレクサンドル・カバネル
1887年 アントウェルペン美術館 ベルギー


エジプトのプトレマイオス朝、最後の女王「クレオパトラ7世」。



その美貌と贅を尽くした饗宴(きょうえん)で知られ、

また、ローマの政治家で軍の指導者でもあった

マルクス・アントニウスとの関係において、

しはしば悪女の権化としての姿が絵画化されているそうです。



絵の左側には、苦しみ悶えている姿と死んで運ばれていく姿。

そして、それを平然と眺めるクレオパトラが描かれています。

ちなみにクレオパトラの足元にいる豹(ひょう)は、王権の象徴だそうです。



○美貌で魅了し、自らの虜にしてしまう魔女アルミーダ

○美貌と才覚でのし上がったポンパドゥール夫人

○横浜美術館に展示されていたカバネルの絵画「ビーナスの誕生(レプリカ)」


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肉体は滅んでも
霊魂の救済を信じて

「ベアタ・ベアトリクス」 ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ
テート・ブリテン ロンドン


ルネサンスの大詩人ダンテが、

24歳でなくなった初恋の人「ベアトリーチェ」を悼(いた)んだ絵画。



ダンテは、ベアトリーチェの意識が肉体を離れ、

天上に上りつめた瞬間の恍惚(こうこつ)状態にも似た、

死そのものを描いたそうです。



絵の中で、ベアトリーチェは目をつむり、もはや意識のない状態にあります。



顔の右側にある日時計は、彼女がなくなった時刻「9」を指し、

彼女の手元に飛んできた天国の使者である鳩は、

死のシンボルであるケシの花を落とそうとしています。



そして背後にある町は、ダンテが彼女と出会ったフィレンツェの町並み。



絵の右後ろにはダンテ本人がおり、

左側のアモル(愛)とみつめあっているそうです。



○人生終焉の美 「お世話になった方の散骨式」


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われわれはどこから来たのか
われわれは何者か
われわれはどこへ行くのか

ポールゴーギャン 1897-1898年 ボストン美術館


この絵を描きおえた後に自殺を決意していたゴーギャン。



画面右側の子供と共に描かれている3人の人物は人生の始まりを、

中央の人物たちは成年期をそれぞれ意味し、

左側の人物たちは「死を迎えることを甘んじ、諦めている老女」。


その老女の足もとの白い鳥は

言葉がいかに無力なものであるか、ということを物語っているそうです。



○ポール・ゴーギャンの絵画


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参  考  情  報


○西洋絵画よみとき66のキーワード 千足伸行 東京美術

○悪女入門 ファム・ファタル恋愛論 鹿島茂 講談社現代新書

○世界の伝記 クレオパトラ 古代エジプト最後の女王 集英社
  監修 サイバー大学学長 吉村作治

○絶頂美術館 名画に隠されたエロス 西岡文彦 新潮文庫

○これまでの美術鑑賞履歴


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