本質を見極める体系化手法




1.概 要


例えば会議の場面を思い浮かべてみると、
会議に参加している人たちは立場や担当している仕事も違うし、
年齢や経験、考え方や利害も違う事が多いので
様々な意見がでますよね。


また具体的な意見もあれば、抽象的な意見もあるし、
本質から外れた意見、意見ではなく質問もあると思います。


たくさんの意見や質問がでてくると、
何が課題で、どれから着手すれば良いか
悩む事ってありませんか?


そんな時に整理体系化の手法が有効です。


2.概略ステップ


整理体系化の概略ステップはこんな感じ。


 1)意見の記述化
 2)グループ化
 3)グループ間の関連整備
 4)シナリオ形成



各ステップをもう少しブレイクダウンしてみてみましょう。


1)意見の記述化


 様々な意見や質問がでてきた時に頭の中で
 整理できる人もいると思いますが、
 慣れていないとなかなかできないものです。


 そんな時は、各々の意見を記述していきます。


 当たり前と思うかもしれませんが、
 意見を記述するのは意外と大変。


 一つの理由は言葉でしゃべるスピードと記述する
 スピードが異なるからです。


 速記のように正確に記述する事は難しいと思いますので、
 相手が言っているキーワードを記述していきます。


 記述にあたっては、二つの事柄があるものを一つ
 の文章で記述しないという事がポイントになります。
 (一つの事柄は一つずつわける)


2)グループ化


(1)関連性を見つけ出す

 記述化の後はグループ化を行います。

 グループ化は記述した内容を見比べて、
 関連性があるものを探していきます。


 関連性がみつかったら、その記述文章にタイトルをつけます。
 ちなみにKJ法ではこれを「表札作り」と呼んでいます。


 グループにタイトルをつけたら、
 そのタイトルを基に同様にグループ化を行っていきます。


 何回やれば良いかは明確な答えはありませんが、
 3回〜5回やると答えが見えてきます。



(2)グループ化はとっても大変!

 このグループ化は言うは易しで、実はやるのはとっても大変。


 大先輩コンサルタントは、
 「体系化を修得するには、できる人で3年かかる」と言っています。


 裏返せば、できない人は何年やってもできないという事で、
 私もこの業界で10年以上となりますが、この事は痛切に感じます。


 これができなくて辞めていった方は結構いるんです。


 マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、
 現在(2009年)ヘイ グループ プリンシパルの綱島邦夫氏は
 「社員力革命」の中の「コンピテンシー手法と能力開発」にて、
 分析思考(物事を上手に整理する能力)は、
 後から育成できない先天的なものだといっています。


 またハーバード・ビジネス・レビューの論文
 「サービス指向アーキテクチャー(SOA)が生み出す
 超リエンジニアリング革命」では、
 SOAを実施にあたっては、高度なデータマイニング技術と
 データ分析能力が不可欠で、それが難しいと指摘しています。


 さらにトヨタ自動車では「5つのなぜ」という手法がありますが、
 実際、ある企業で「5つのなぜ」を実践した内容を
 見せて頂くことがありました。


 しかし「なぜ」がつながっていない場合が多く、
 次の「なぜ」の答えではなく、並列的になっている場合や
 「なぜ」の答えになっていなかったりしています。


 ちなみにベテランの方は長い経験の中で培ってきた
 ノウハウがあるので、5回もなぜを繰り返す以前
 にいきなり答えになってる事もありました。
 (→その方は解っているけど、周りには説明ができない)

 このグループ化はそれだけ難しいということなんです。


(3)グループ化の大きな特徴

 グループ化は、それをする人によって答えが
 変わるという大きな特徴があります。

 対象としたテーマに対して、知識と経験を持った人がやる場合と、
 何も知らない人がやる場合では、自ずと答えが変わってきます。



(4)グループ化の手法

 グループ化の手法は、たくさんの方が研究されたお陰で
 既に複数の手法が存在しています。


 用途は手法によって異なりますが、
 整理体系するという意味では同じだと思いますので、
 何手法かご紹介します。


 @連関図法(新QC7つ道具)
 A系統図法(新QC7つ道具)
 Bマトリックス図法(新QC7つ道具)
 C親和図法(新QC7つ道具)
 Dアローダイヤグラム図法(新QC7つ道具)
 EPDPC法(新QC7つ道具)
 Fマトリックスデータ解析法(新QC7つ道具)
 GKJ法(文化人類学者・川喜田二郎氏)
 HKT法(ケプナートリゴー)
 IMECE(マッキンゼーはこの手法を活用)
 J系統図(VE:価値工学)
 K正規化(情報システム開発技法)
 LE−Rモデル(情報システム開発技法)
 Mユースケース(情報システム開発技法)
 N戦略マップ(バランス・スコアカード)
 O5つのなぜ



(5)手法は「知っている事」より「使える事」が重要


 体系化に限らず手法は、手法を知っているだけでは
 あまり意味がなく使える事がとっても重要です。


 マニュアルに書いてある通りに実践できるのも大切
 ですが、自分が使いやすいように活用できる事の方
 がよっぽど意味があると思います。


3.グループ間の関連整備


 グループ化を行った時点で、
 そのグループに対する個別課題はある程度見えていると思いますが、
 グループ間の関連を整備しないと、
 どの優先順位でやれば良いかがみえてきません。


 その為、グループがどのようにつながっているかを
 矢印や線などで結び関連性を可視化していきます。



 ○因果関係を明らかにするバランス・スコアカードの戦略マップ


4.シナリオ形成


シナリオ形成は、
グループ間の関連整備を文脈をもって構成することです。


これにより自分にとって理解が深まり、
相手にも訴求ができ、伝わりやすくなります。


構成にあたっての視点としては、
以下のようなものが活用できます。


1)起承転結(必ずしも「転」がある訳ではない)

2)5W1H
  誰が・なにを・なぜ・いつ・どこで・どのように)

3)SDS
  Subject(目的)・Detail(詳細)・Subject(目的)

4)PREP
  Purpose(目的)・Reason(理由)・Example(例示)・
  Purpose(目的)

5)背景・目的・目標・アウトプット・課題・ステップ・想定する結果



○「外部環境」と「内部環境」の実態を踏まえたシナリオ骨格立案


5.参考:KJ法


KJ法は、文化人類学者の川喜田二郎氏
(東京工業大学名誉教授)が膨大な情報を
まとめる為に考案された手法です。


ちなみにKJは、川喜田二郎(かわきたじろう)氏
のイニシャルをとったものです。


KJ法はデータをカードに記述し、カードをグループ
ごとにまとめて図解し、論文等にまとめていきます。



1)KJ法のステップ

 (1)カードの作成
 (2)グループ編成
 (3)図解化(KJ法A型)
 (4)叙述化(KJ法B型)



2)W型図解(KJ法の原型となった考え方)

 (1)問題提起
 (2)探索
 (3)データをして語らしめる
 (4)決断・評価
 (5)具体策
 (6)手順化
 (7)実施
 (8)吟味検証
 (9)結果を味わう



3)参考書籍

 私が購入した本をご紹介します。

 「KJ法 混沌をして語らしめる」 中央公論


関 連 情 報


○アイデアを出し易くするブレーンストーミング

○議事録の取り方


ちょっとブレイク


○洩れ日が美しい天空のカフェテラス