はじめに |
■日経新聞社主催 2つのセミナーへ参加 直近(2009年冬)、日経新聞社主催の2つのセミナーに参加しました。 一つは「安全づくりの時代が来た・・・企業は、消費者は今、何をすべきか」。 もう一つは「グローバル経済時代のCSR経営を考える」。 日本を代表する新聞社が主催しているセミナーなので、 どうやら世の中では「安心・安全」や「CSR」というものが 注目されているようです。 ■テーマが異なるセミナーの共通点をまとめる 2つのセミナーに参加してみて、 共通しているキーワードがありそうなのでまとめみました。 |
結 論 |
最初にまとめてみた結論を掲げます。 1.市場原理主義、成長至上主義の反省から 価値が変わってきている 2.新たな価値を創造するには、 @自律化と自己実現による社会貢献の実現 A人材の重要視 Bリスクを持つ C安全・安心(信頼)の重要視 D企業を取り巻く関係者(ステークスホルダー)とのバランス確保 E多様化したコミュニティとのコミュニケーションの重要視 F定量だけでなく定性を考慮、客観だけでなく主観を考慮 Gマイナス情報も公開。言える環境作り H人のもっている感度を高める I短期だけでなく長期を考慮 |
『安全づくり』の時代が来た 【セミナーのポイント】 |
■「ものづくり安全」から「安全づくり」へ 安全な製品を、安全な職場で、安全に作る「ものづくり安全」から、 信頼される企業の、安全な製品を、安全に使ってもらい、 安心できる社会をつくる「安全づくり」へ。 ■企業のブランドを損なわせる要因 1位 製品の事故 2位 個人情報の流出 3位 サービス窓口の対応 4位 リコール情報 企業の製品安全への取組みに関する消費者意識調査 三菱総合研究所 2008年5月より(以下の2つのデータも同様) ■消費者の企業に対するブランドイメージの決定要素 ブランドイメージの決定要素には「製品の機能や性能が高い」に続いて、 「製品の安全性が高い」が入り、消費者は安全を重視しているようです。 1位 製品の機能や性能が高い 2位 製品の安全性が高い 3位 技術力がある ■製品事故の責任 俗によく聴くトップ会見では、 部下に責任をおしつけちゃっているような会見もありましたが、 この製品事故の責任が誰にあるかの調査では、 経営トップという回答が1位でした。 1位 メーカーの経営トップ 2位 メーカーの経営陣 3位 メーカーの設計責任者 ■責任をかぶる実行者 −相互依存の関係− 以下の文章はセミナーではなく、 「戦後日本経済史 野口悠紀雄 氏 新潮選書」から引用。 97年の第一勧業銀行、野村証券の総会屋への利益供与事件。 こうした事件では、企業トップの命を受けた実行者がすべて責任をかぶり、 そしてトップは「私は知らなかった」と釈明しています。 イトマン手形事件が暴露されたとき、当時の河村社長は 「手形が振り出されたのは私の出張中。担当者が独断でやったことで、 私がいればこんなバカなことはさせなかった」とコメントしたそうです。 では、担当者はなぜ罪をかぶろうとするのか? その理由は、トップを守り通せば会社が最後まで生活の面倒をみてくれるから。 総会屋が絡む事件で逮捕された企業側の関係者の大半は、 関係会社などに再雇用されているそうです。 また2006年の日興コーディアル不正経理事件では、 有罪判決を受けた元常務は、グループの会社の嘱託として再雇用され、 年間2000万円の報酬を9年にわたって受け取っていたという事実があります。 ■安全づくりのステークスホルダーは誰か? 会社は誰のものか? との問に、 数年前は株主と答える人が圧倒的だったそうです。 会社は株主のものなのか?? ○メーカー? ○設計者? ○保守点検者? ○管理者? ○企業の経営トップ? ○社会制度? ○行政? ○利用者? ○社会・市場? ■安全・安心を守るのはだれか 供給する側も消費する側も公的機関も... ○製品・サービスを提供する事業者(第一義的責務) ○政府(公助) ○消費者(自助) ○コミュニティ(共助) ■安全を守る4つの柱 技術的側面に加えて... @技術的側面 A人間的側面 B組織的側面 Cそれを支える理念的側面 安全は、技術、人間、組織(仕組み)を総合して初めて実現される。 また、それを支える理念が必要。 ■安全を守る視点(例示) どうやったら安全を守れるのか? @技術で安全を守る A消費者(人間)で安全を守る ・安全にはお金を払う ・自分の身は自分で守る意識をもつ ・安全を重視している企業を大事にする 情報を隠さず、ミスした情報も開示してくれる企業とか B組織・仕組みで安全を守る ・リスク情報開示 ・水平展開 ■安全に関する大前提 機械は壊れるもの、人間は間違えるもの。 絶対的な安全は存在しない! 包丁だって、使い方を間違えればとっても危険なものに... ■安全の定義(JIS) 人への危害または損傷の危険性が、 許容可能な水準に抑えられている状態。(JISの定義) ■企業の視点と顧客の視点 ○企業は安全の達成を求めている。 ○顧客は安心を求めている。 安全は客観的・数量的なアプローチを目指して発展してきた。 安心は主観的要素が強い。 ■安心とは 人が知識・経験を通じて予測している状況と大きく異なる状況に ならないと信じていること、自分が予想していないことは起きない と信じ何があったとしても需要できると信じていること。 ■安全と安心(安全と安心は異なる) 安心は「信頼する」「信じる」という人間の心と強く関係している。 安心の反対概念は心配、もしくは不安。 安心は心理的、主観的な要素が強い。 ■安全と安心をつなぐ(安全+信頼=安心) ○分かるもの、理解できるものは安心。 ○使い慣れ、親しんでいるものは安心。 ○長い歴史を経ているものは安心。 ○安全がどういう構造で実現されているかが分かること ○最悪の場合には、このような危害が発生するという情報が公開されていること ○残留リスクについての理解・合意・納得等が得られていること 安全が実現されている + 実現している人間・組織を信頼している = 安心 |
グローバル経済時代のCSR経営を考える【セミナーのポイント】 |
■企業経営の価値が問われている リーマンショックきっかけとした世界同時不況による市場原理主義の反省 地球温暖化の加速による成長至上主義の反省 ■企業は誰のものか? 直近まで企業は株主のものという人が多かった!? 果たして今もそう? 企業には誰が関係しているか? ○お客様 ○サンプライチェーン・パートナー ○経営者 ○従業員 ○株主 ○地域 ○社会 ■企業力の要素と変革視点例 @営業力 販売チャネルの見直し、営業マインド変革 Aコスト競争力 B技術力 C組織競争力 ミドルが活躍していない...組織を超えた多様化した講習会 年功序列廃止、シェアードサービス化、組織階層の圧縮(組織のフラット化) ■商品・サービスを支える企業構造 アウトプット:商品・サービス ⇒ 価値創造 方向づけ:コアバリュー ⇒ 企業ドメイン・基本戦略 インプット :企業力(基盤) ⇒ 営業力、ブランド力、組織力、人力、情報力、資金力など ↓ アウトプット:商品・サービス ⇒ 価値創造 方向づけ:コアバリュー ⇒ 経営哲学 インプット:企業力(基盤) ⇒ 経済価値、社会価値、人的価値 企業理念・ガバナンスによりベクトルを統合 ■CSRの機軸 企業品質の要素 @経済価値 これまで重要視されてきた? A社会価値 B人的価値 新たに重要視されてきた? ■CSRの進化 @企業統治のCSR ○倫理、コンプライアンス、内部統制 ○収益を守る視点 ○ルール・システム作り A企業責任のCSR ○メセナ活動等への参加型、寄付型 ○収益を分配する視点 ○価値軸の違い確認 Bビジネス統合のCSR ○外にでて外の価値観から内を観る(CSRの組織内在化) ○収益をうむ視点 ○新しい産業 リサイクル、省エネ(エコ)、CSR調査、働き方変革サービス など ■某企業のCSR取り組みで重視していること ○環境・品質・人材。特に人材を重要視。 ○一人ひとりの際立ちと、自己実現を促し、事業を通じて社会に貢献する。 ○非財務情報(定量ではなく定性情報)への考慮は、まだまだ発展途上。 ○人事制度までは踏み込めていない。 ○人のもっている感度をどう高められるか。 ○会社の中で感じていることを口にできるか、できないか。 ○Openな会社になっているか、どうか。 ○日本は画一的が心地よかった。 |
参加したセミナー |
■『安全づくり』の時代が来た・・・ 企業は、消費者は今、何をすべきか 向殿政男氏 明治大学理工学部教授 松本恒雄氏 一橋大学法科大学院長・消費者委員会委員長 北野大氏 明治大学理工学部教授 木村昌平氏 セコム取締役会長 白石真澄氏 関西大学政策創造学部教授 ■グローバル経営時代のCSR経営を考える 有馬利雄氏 富士ゼロックス相談役 特別顧問 国際グローバルコンパクト・ボードメンバー スコット・デイヴィス氏 立教大学経営学部教授 安達栄一郎氏 損害保険ジャパン 理事 CSR統括部長 白鳥和彦氏 積水化学工業 CSR部 CSR企画グループ グループ長 |
日本生産技能労務協会のCSR宣言 |
様々な企業が会員となっている社団法人 日本生産技能労務協会(JSLA)のCSR宣言。 当協会の会員企業は、製造の請負や派遣で働く人たちが安心して、 安全かつ健康に働けるようにするとともに業界の健全化が図られるよう CSR宣言をいたします。 ■ミッション 人間尊重の基本理念に基づき、働く者の権利を守り、事業活動を通して、 働き甲斐のある職場環境をつくり、わが国産業ならびに健全な社会の 発展に寄与することを協会の責務とします。 ■行動指針 ○法令及び協会の倫理規定等を遵守し、健全な企業運営を行う。 ○安全衛生管理体制を整備するとともに積極的な安全衛生管理 活動に取り組み、労働災害の撲滅に努める。 ○適正な「請負」を推進する。 ○労働者の就業へ不利益につながる不公平な競争は行わない。 ○ステークホルダーに対して、虚偽、誤解を招くような宣伝や 情報提供はしない。 ○「CSR宣言」を会員企業の隅々まで周知徹底し、誠実・公正な 業務遂行に努める。 ■ホームページ 社団法人 日本生産技能労務協会のサイト |
倫理とは |
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